9年で668社の神社が減少 危機の「祭り」に女性や地域外の人たちの参加、マッチングサービスも #絶滅危惧文化
女性参加に否定的な意見が住民の間にあることも分かっていた。そのため、宇佐美宮司は「意味づけ」を考えた。 「祖父が宮司の時代には、すでに祭りの日の食事を準備する役割は女性が担ってもよいとされていました。各家庭から男性に出てもらい、祭りの手伝いをしてもらっていたのですが、当時すでに女性1人だけの世帯もあったからです。そこで『うちのじいさんの頃から私たちは祭りの日、女性が作った料理を食べてきた。将来、女性が舞う状況が来る準備をしてくれとったんだ』と意味づけて、納得してもらいました」 2020年12月の祭りで初めて宇佐美宮司の妻が最初の舞い手となり、翌年、坂井さんが続いた。 こうした判断は結果として、霜月祭にとってはよかった。遠山地方では担い手不足により祭りを中止した地区もある。かつて遠山郷の霜月祭は17社で営まれたが、今では8社にまで減っている。そんななか、上町では祭りの継承に向け、女性にも参加してもらうことで祭りを続けている。
「本来の姿を変えてまで続けるのは違うとなった地区もある一方で、上町では形を変えてでも先人の伝統をつないでいきたいという気持ちの方が強かったのだと思います。私はこのように維持していくのに一定の意義は感じています」(坂井さん)
急減している神社とその合併
祭りが全国で減っている。毎日新聞の無形民俗文化財アンケート調査によれば、都道府県が指定する無形民俗文化財(1737件)のうち93件が休止状態にあり、1975年に現行の指定文化財制度が始まって以来、指定を解除された祭りや行事は9件あるという(2024年11月6日の記事)。市町村が指定・選定する6541件や、そもそも指定・選定されていない祭りになると、さらに多くが休止に追い込まれていると見られる。 祭り休止の次の段階として懸念されるのは、そんな祭りの舞台でもある神社の消滅だ。実際、文化庁宗務課による宗教統計調査では2015年以降急減し、8万1237社だったのが2024年には8万569社と9年間で668社がなくなっている。