日銀・黒田総裁会見10月28日(全文2)矢野次官の寄稿へのコメントは差し控えたいが
欧米でもリーマンショック後、ほとんど2%に達していない
それから3つ目の動向っていうのは、これは前から申し上げている粘着的な適合的期待のメカニズムっていうのが依然として効いているということがある。ただ、これはそういうことで今の現状は説明できるってことだけであって、だから需給ギャップはもう一切プラスにできないとか、それからインフレ期待、物価上昇期待っていうものを引き上げられないということを意味しているわけではないというふうに思っております。 欧米でもリーマンショック後、ほとんど2%に達してないわけですけども、だからといってじゃあ2%の物価安定目標を放棄するかと、そういうことを誰もしてないわけですね。それはやはり中長期的に見てそういう2%の物価安定目標というものを堅持して、それに向けて金融政策を運営していくっていうことが経済の安定といい、物価の安定といい、さらにはそれを通じて雇用も安定していくということを理解しているからそうしているのだと思いますので、われわれもまったく同様な考え方に基づいて、2%の物価の安定というものは維持していくということだと思います。
スタグフレーションの入り口にあるのでは?
読売新聞:すいません、読売新聞の【セキネ 00:45:09】と申します。まず1点目、海外のことについてちょっとお伺いしたいんですけれども。米欧では成長率に比べて物価上昇がかなり大きくなっているわけですけど、市場関係者の間でスローフレーションというような言葉を使う方もいますけれども、スタグフレーションの入り口にあるんじゃないかという指摘をする方たちもいますが、これについて総裁はどうお考えになられるか。 もう1点は、物価上昇の背景に供給制約があって、今回の展望レポートでも供給制約が長引くことへの懸念を示してらっしゃいますけれども、供給制約が起きている中で大規模な緩和を続けると賃金の上昇が伴わない悪い物価上昇みたいなものが進むんじゃないかという指摘もありますけれども、この辺に対してどのようにお考えでしょうか。 黒田:まず第1点で、スタグフレーションうんぬんについては、ご案内のとおりスタグフレーションは、持続的なインフレ率の上昇と景気の悪化、成長率が低下あるいはマイナスになるということが同時進行するという現象で、典型的にはわが国経済としては、例えば1970年前半の第1次オイルショックのときに、消費者物価が前年比2割を超える上昇をするとともに戦後初めてのマイナス成長になったということで、典型的なスタグフレーションだったわけですが、これはわが国も、それから海外、欧米諸国も、いずれもコロナの影響でいったん非常に経済が落ち込んだわけですけれども、その後、回復をしてきておりまして、成長率も基本的に回復してプラスになってきている。物価上昇率は日本にとってはほとんどないということですが、確かに欧米で物価上昇が起こっていますけど、成長もしてますんで、これはあくまでもスタグフレーションではないんですね。 しかもそのインフレといわれるものが一時的なもので、需要が急速に伸びているので、供給、特に欧米の場合は労働力のミスマッチというもので供給がすぐに追い付かないということで賃金・物価が上がっているわけですけども、これはあくまでも一時的な現象であるということだと思います。いずれにせよスタグフレーションではないわけです。