中国の経済指標が示す“気になる兆候”
コロナ禍で好調さを見せる中国経済ですが、今後の世界経済や日本経済にとって気になる兆候が見られるといいます。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストの分析です。 【グラフ】コロナ不況なのになぜ空前の株高? 謎ひも解く3つの要因
輸出入が引き続き高い伸びを見せる
一足先に景気回復を実現した中国は、政策当局がアクセルペダルから足を離しつつあるように見えます。既にアクセル全開で突っ走っている米国の経済政策も2022年には金融緩和の度合いが弱まることが予想されています。これらは景気回復の途上にある日本にとって、将来的な波乱要因になりそうです。 以下、最近の中国経済を見ていきます。6月7日に発表された5月の貿易統計は、輸出入がともに強さを保ち、中国並びに世界経済が力強い回復軌道にあることを印象付けました。輸出(米ドル建て)は前年比+27.9%、輸入は+51.1%と高水準の伸びが続きました。 輸出は昨年の落ち込みの反動によって実勢が把握しにくくなっている面があるとはいえ、過去数か月は2019年との比較で20%台後半の伸びを示しており、世界的な財需要の強さを裏付けています。日本向けに関しては+5.0%と控えめですが、米国向けは+20.6%と高い伸び維持し、ASEAN(東南アジア諸国連合)向けは+40.6%と大幅に伸長しています。そうした中、財貿易の活発さを反映するコンテナ船運賃指数(中国発)は空前の高水準に到達しています。 輸入も高い伸びが続きました。日本(+33.6%)、米国(+40.5%)など主要国・地域からの輸入が軒並み高い伸びを維持し、2019年対比で見ても30%近い増加基調にあります。中国のワクチン接種率が50%程度に達し、中国国内の需要(個人消費)が復調気配を強める中、先進国を中心とする景気回復を受け、加工貿易に用いるための中間財や設備投資に関連する財の輸入が増加しています。製造業の景況感を表す5月のPMI(購買担当者景気指数)は52.0と13か月連続で好不況の目安となる「50」超を維持しました。当面は国内外の底堅さを背景に堅調な伸びが続く可能性が高いと考えられます。