ドローンよ、福島から飛び立て 再興拠点に集まるベンチャーの挑戦 #知り続ける
ドローンは国土交通大臣の許可が得られれば、人口密集地でも飛ばすことはできる。ただし、水素燃料電池ドローンの場合、水素が充填された高圧ボンベを搭載する。万が一、落下した場合は大きな事故につながる恐れもある。貝應さんは2019年、水素燃料電池ドローンの飛行実験ができるかロボテスに相談した。 その結果、高圧ボンベが落下しても水素ガスが漏れないようにするなど安全対策を講じたうえで、実験に取り組めることになった。同年7月、日本初の水素燃料電池ドローンの飛行試験を実施した。最大瞬間風速10メートルの強風が吹くなか、ドローンは40メートルほどの高さまで上がり、無事に飛行した。 「誰もやったことのない飛行試験に使用許可をもらえたのは、ロボテスだったからです。腰が引けてもおかしくない試験でしたが、みな前向きに対応してくれました」と貝應さんは笑みを浮かべる。 この試験後、ロボデックスはロボテスに入居。また、経産省では、高圧水素ガスボンベの安全基準に関する議論も開始されることになった。2020年4月にはガイドラインが策定され、ロボデックスは2021年10月、経産大臣の特別許可(大臣特認)と国交省航空局の飛行許可を得ることができた。
ロボデックスの次の目標は南に13キロほど離れた浪江滑走路との往復飛行だ。浪江滑走路もロボテスの施設の一部であり、近隣には太陽光発電を利用した世界最大級の水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド」もある。貝應さんはその水素もドローンに活用し、地域を盛り上げたいと考えている。 「浜通りは国を挙げて水素エネルギーの推進をしている地域。であればこそ、水素燃料電池ドローンによる物流実験を実施して、世界に発信していく価値があると思っています」
2025年度に6468億円の市場規模
無人航空機の産業利用は1980年代、農薬散布などに使われだしたラジコンヘリが始まりだが、当時はガソリンエンジンで機体も数百万円と高価だった。2010年代に入り、リチウムイオン電池が手頃になると、個人でも飛ばせるドローンが注目を集めるようになった。『ドローンビジネス調査報告書2021』(インプレス総合研究所)によると、2015年度に104億円程度だったドローン業界の市場規模は、5年後の2020年度には1841億円に急拡大し、2025年度には6468億円になると見込まれている。