日本以外ボロ負け…スタバが中国でやらかした「失策」、強敵との差が埋まらないワケ
世界的カフェチェーン「スターバックス」が、日本以外の市場で深刻な業績不振に陥っている。米国では直近2年間でCEOが4人交代するなど経営体制の混乱も続いているほか、中国市場はかつてないほど悪化している。そもそもスターバックスは2022年に「2025年までに当時の6000店舗から9000店舗に拡大」を掲げるなど、中国事業に本気の姿勢を見せてきた。それなのになぜ、このような事態になってしまったのか。スターバックスがやってしまった失策、強敵との差が埋まらない理由など、「スタバ復活」の鍵を握る中国市場を掘り下げる。 【詳細な図や写真】スターバックスとラッキンコーヒーの中国市場での売上高推移。スターバックスは売上を落とし、ラッキンコーヒーとの差が広がっている。比較のために自然年四半期にそろえている(出典:各社財務報告書)
熾烈な中国カフェ競争からスタバが「離脱」
スターバックスの中国事業がかつてないほど悪化している。2024年Q2(自然年)の既存店売上は前年比14%減という大きな落ち込みで、売上高も7億3,380万ドルと、ライバルである中国国内系の瑞幸咖啡(Luckin Coffee:ラッキンコーヒー)の11億5,620万ドルに大きく水を開けられてしまった。 さらに、2022年10月から店舗展開を始めた庫迪咖啡(COTTI COFFEE:コッティコーヒー)が店舗数を急速に拡大し、2024年9月には7647店舗となり、スターバックスの7511店舗を抜いてしまった。中国で「咖啡老師」(和訳:コーヒーの先生)と呼ばれてきたスターバックスは、もはや売上高では2位、店舗数では3位のカフェチェーンになってしまった。 この2年ほど、この3チェーンで繰り広げられてきた低価格競争、店舗拡大競争は、スターバックスが脱落することで、ラッキンとコッティの一騎打ちの様相を呈してきた。スターバックスは低価格競争には一定の距離を置いていたため、「脱落」という言葉は適切ではなく、「自発的な離脱」と見る向きもある。しかし、このコーヒー戦争の火ぶたを切ったのはスターバックスだった。
“本気”の戦略発表した翌月から狂い始めた歯車
2022年9月、ラッキンに店舗数で追いつかれたスターバックスは、中国における「2025ビジョン」を発表した。それは、当時6000店舗だったものを2025年までに9000店舗に拡大し、しかも300都市に展開、スターバックスがこれまでリーチしていなかった地方都市にも展開するという内容だった。「無謀な計画だ」と評する人もいれば、「スターバックスが本気を出した」と評する人もいた。 しかし、翌月、すぐにスターバックスの歯車が狂い始めた。コッティが店舗展開を始め、8.8元(約190円)の低価格と驚くべき店舗展開速度で急成長を始めた。ラッキンも対抗をして9.9元の低価格販売をし、店舗展開の速度を加速、2024年7月には北京市中関村に2万店舗目をオープン。低価格、店舗数とも、もはやスターバックスの手の届かないところにまで進んでしまった。