ドローンよ、福島から飛び立て 再興拠点に集まるベンチャーの挑戦 #知り続ける
地域に希望を与える産業創造を
危機感をもった経済産業省、復興庁、福島県は浜通りの産業を再興させるために、2014年に「福島イノベーション・コースト構想」を策定。「廃炉」「ロボット・ドローン」「エネルギー・環境・リサイクル」「農林水産業」「医療関連」「航空宇宙」の六つの重点分野を定め、事業を進めてきた。2018年度から21年度に限っても、国と福島県合わせて約2878億円もの予算が充てられている。 ロボテスは、「ロボット・ドローン」と「航空宇宙」の二つの分野を担う拠点として整備された。地元の南相馬市も期待を込めている。細田さんは語る。 「福島イノベーション・コースト構想は、今まで通りに戻すだけではなく、住民や帰還される方々が希望を感じられるように新たな産業や雇用を生み出す試みです。たとえば、南相馬市は金属加工が盛んなので、地元の技術力とロボテスの利用者をつなげられるようにしています」
ロボテスには研究棟もある。2022年2月現在、企業、大学、研究機関など19団体が入居している。北海道や兵庫県など遠方からの入居者もいる。 地域外から集まった団体が南相馬で新しい産業をつくり出し、雇用を生み、社会を変えるイノベーションを起こす。地元の子どもたちがそれを見て大きな夢をもつ。細田さんはこうした好循環を期待している。
水素を活用した長時間飛行ドローン
イノベーションを期待されている企業の一つが、水素燃料電池でドローンの飛行時間を延ばそうとしているロボデックスだ。代表取締役の貝應大介さん(54)は言う。 「現在、ドローンの動力はリチウムイオン電池が主流です。ただ、これは長くても30分くらいしか飛行できません。もし物流などで活用するなら、最低でも2時間くらいは連続飛行させる必要があります。そこで2019年から、私たちは水素を生かした燃料電池ドローンの開発に取り組んできました」
燃料電池は水素と酸素を反応させて発電する。このドローンは、空気中から取りこんだ酸素と高圧ガスボンベの中にある水素を燃料電池内で反応させることで電気をつくり飛行する。リチウムイオン電池のものより1キロほど重くなるが、飛行距離をはるかに伸ばせる。しかし、このドローンの開発には問題点があった。貝應さんが続ける。 「法規制です。当時、ガスボンベを搭載したドローンは想定されていませんでした。明確なルールも前例もないので、危険物のガスボンベを搭載したドローンを飛ばせる場所がなかったのです」 もともと貝應さんはエンジニアで、メガソーラー発電所で不具合を発見する方法としてドローンに注目。ロボデックスではドローンを物流で使うことを想定し、長時間飛行に向けた開発を進めた。