ドローンよ、福島から飛び立て 再興拠点に集まるベンチャーの挑戦 #知り続ける
ドローンは空撮や農薬散布だけでなく、インフラ点検、物流、警備、安全保障と、様々な分野で利用が進むとみられている。昨年には内閣官房による「空の産業革命に向けたロードマップ2021」も公開され、法整備や技術開発、社会実装(宅配、医薬品、救援物資)など具体的な目標が掲げられている。 前述のとおり、ロボテスは浜通りの産業の興隆が目的で、実証実験への協力体制が充実している。浜通り地域には飛行機のような固定翼機も含めドローン事業者が27社も新規進出し、8社の地元企業がドローン事業に参入している。 ロボテスに入居後、近隣に新たな拠点を設けたベンチャーもある。
災害時の画像解析に強みをもつ企業
2019年10月、東日本の各地を襲った台風19号。福島県内でも阿武隈川が氾濫し、30人以上の死者が出る被害となった。当時、南相馬市は事業者とドローンを使って被害状況を把握しようとした。山間部が多く、地上からは被害状況がよくわからなかったからだ。
このとき、市と協力して活動したのが画像解析に強みをもつテラ・ラボだ。マルチコプター型ドローンを自ら飛ばし、被災現場の写真と動画を撮影。写真や動画は奥行きなどがわかりにくい平面的な情報だが、それらをもとに立体的な地形などを示す3次元データをつくり、土砂崩れや浸水の場所を一目でわかるようにした。テラ・ラボ代表取締役の松浦孝英さん(48)が言う。 「空撮した写真から空間データをつくったり、解析したりする技術をもつ事業者は私たちしかいませんでした。立体的な地形データをつくることで、平面的な写真などではわかりにくい土砂崩れや浸水などの状況をわかりやすく示しました。消防の方からも被害状況がよくわかり二次災害も防げたと評価していただきました」 昨年7月に静岡県熱海市で土砂災害が発生したときも、テラ・ラボは現場に駆けつけた。ドローンやヘリで上空から撮影された写真をもとに「共通状況図」のベースマップや、高精度の広域地図データをいち早く作成した。共通状況図とは、建物被害、救援・復旧状況など様々な状況を一つにまとめたもの。テラ・ラボが作成したデータは熱海市、防災科学技術研究所、内閣府などへ提供され、状況を把握する基礎的な資料となった。