ドローンよ、福島から飛び立て 再興拠点に集まるベンチャーの挑戦 #知り続ける
テラ・ラボは、最終的に飛行機型のドローンを使用して高精度の地図をつくり、自治体やインフラ事業者などに活用してもらうビジネスモデルの構築を目指している。松浦さんが言う。 「以前ITベンチャーを起業しデータ利用の価値もわかっていたので、災害データをビッグデータ化して共有できるといいなと考えていました。それを実現するために国内の研究者を回りました。当時、研究者とやりとりしやすい大学職員だったのも幸いしました」 テラ・ラボは、災害時に広範囲の被害状況を把握できるように、航続距離の長い飛行機型のドローンを開発している。2018年に北海道で翼長4メートルの無人航空機の連続100キロ航行という飛行試験に成功。滑走路のあるロボテスの存在を知ると、2019年9月に研究室に入居した。同時に、近隣にある南相馬市復興工業団地に新たに研究拠点を建設する計画も立てた。松浦さんは言う。
「滑走路だけがある場所はいくつかあります。でも、近くに建物が建てられる場所はここしかありませんでした。福島ロボットテストフィールドと南相馬市復興工業団地は理想的な環境でした」 研究室に入居後、衛星通信制御の無人航空機、航空機の地上支援システムなどを開発した。2022年現在、テラ・ラボはロボテスの研究棟を退出し、復興工業団地に完成した建物で活動している。復興の一翼を担おうと、現地採用の人材を含め5人のスタッフを常駐させている。 「ロボテスを最初に見学した2019年2月でも、まだ震災の傷痕は残っていました。それでもテストフィールドをつくり、復興させようとしている人たちがいる。それに感銘を受けました。復興支援で最も重要なことは雇用創出、定住者を増やすことだと聞き、お役に立てればと思っています」
南相馬の変化を目にしてきた思い
じつはロボテスのある場所は、東日本大震災時に津波が押し寄せた場所でもある。ロボテスを運営する(公財)福島イノベーション・コースト構想推進機構で事業企画課長を務める石川仁さん(50)は、福島第一原発事故後に避難で誰もいなくなった状況も目にしている。当時は警備会社に勤めており、たびたび原発周辺の町をまわり、浜通りの変化を見守ってきた。