なぜマラソン東京五輪代表の大迫傑は現役復帰を決断したのか…刺激を受けた2人の年上ランナー
男子マラソンで日本記録を2度塗り替えた大迫傑。東京五輪の直前、「8月8日のマラソンを現役選手としてのラストレースにします」と自身のSNSで発信した。そして東京五輪で6位入賞を果たして、現役生活に別れを告げた。 その後は自身が立ち上げた『Sugar Elite kids』の活動で日本全国を縦断しながら、駅伝やマラソンのテレビ解説などを務めていた。しかし、2月7日に「現役復帰」を宣言。17日にメディア向けセッションを行い、現在の気持ちを言葉にした。 まず現役復帰した理由について。昨年10月10日に行われたシカゴマラソンを観戦したのが大きかったという。 「東京五輪後はSugar Elite kidsの活動などでバタバタしていたんですけど、9月末から1カ月ぐらい米国でのんびりすることができました。ちょっと走ってみようかなと思ったときに、ワークアウトも週に1~2回入れてみたら、そこそこ走ることができたんです。そういう状況のなか、家族でシカゴマラソンを観たんですけど、東京五輪で8位入賞したゲーレン・ラップ選手が2カ月という短い期間で2位(2時間6分35秒)に入りました。カッコいいなと思ったと同時に、僕自身も観る人たちがワクワクしてくれるような場所に立ちたいなと思ったんです。その熱量がここを超えたら行動しようというラインをはるかに超えていたので、もう1回挑戦してみようと決めました」 シカゴマラソンは大迫が2018年に2時間5分50秒の日本記録(当時)を樹立した大会だ。昨年は大迫の日本記録を塗り替えた鈴木健吾(富士通)が出場して、2時間8分50秒で4位に入っている。そのレースで優勝争いを繰り広げたのがゲーレン・ラップ(米国)だった。 ラップはロンドン五輪(12年)の10000mで銀メダル、リオ五輪(16年)のマラソンで銅メダルを獲得した選手。大迫が憧れたランナーであり、ナイキ・オレゴン・プロジェクト時代のチームメイトになる。 「トラックをメインにやっているときはゲーレンが目標でした。身近な存在なので、2~3年前は脚の故障に悩み、彼がもがいてるところも見ています。僕よりも全然年上ですし、彼のような選手が活躍するとやっぱり刺激になりますよね」 30歳で東京五輪を迎えた大迫だが、ラップは5歳年上になる。35歳のラップが東京五輪に続いて、シカゴでも好走した姿を自身の“未来像”に重ねたのかもしれない。