なぜ初マラソンの西山雄介が強風の別府大分を2時間7分47秒の大会新で勝てたのか…駒大時代は箱根駅伝で凡走も5年計画で開花
2年ぶりの開催となった別府大分毎日マラソン(6日・大分市高崎山・うみたまご前発―別府市亀川漁港前折り返し―大分市営陸上競技場着コース)は冷たい風が吹き込んでいた。スタート時の天候は晴れ、気温7度、湿度43%、西北西の風6m。好タイムは難しいかと思われたが、第70回の記念大会にふさわしい“華々しい記録”が誕生することになる。
初マラ日本最高記録に5秒届かなかったのが悔しい
トップ集団は中間点を1時間3分39秒、30kmを1時間30分31秒で通過した。ペースメーカーが外れると、徐々に集団は絞られていく。35kmでトップ集団は6人。レースが大きく動いたのは36kmだった。初マラソンの古賀淳紫(安川電機)がペースを上げて、集団から抜け出した。 古賀の背中を初マラソンの西山雄介(トヨタ自動車)と今回がマラソン本格参戦となる鎧坂哲哉(旭化成)が交互に引っ張るかたちで追いかける。39.3km付近で並ぶと、40kmで西山がスパート。強風のなかでも力強い走りを見せた27歳が2時間7分47秒の大会新記録でゴールに飛び込んだ。 「優勝を目指してやってきたので凄くうれしく思います。オレゴン世界選手権の派遣設定記録(2時間7分53秒)も突破することができたんですけど、初マラソン日本最高記録に5秒届かなかったのが少し残念です」(西山) 10000mで27分29秒74(日本歴代6位)を持ち、2015年北京世界選手権にも出場した31歳の鎧坂は大会新の2時間7分55秒で2位。3位(2時間8分20秒)の藤曲寛人(トヨタ自動車九州)、4位(2時間8分30秒)の古賀、5位(2時間8分44秒)の相葉直紀(中電工)、6位(2時間8分51秒)の中西亮貴(トーエネック)までが2024年パリ五輪代表選考会となるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の出場権を獲得した。
テレビ解説を務めた中国電力・坂口泰監督が「こんな記録が出るとは、レース前は想像していませんでした」と興奮気味に話すほど、今大会はハイレベルになった。厳しい条件のなか、なぜこれほどの好タイムになったのか。 まずはコンディションを考慮して、直前にペース設定を変更したのが吉と出た。向かい風となる10kmまでを5km15分00秒ペースから15分10秒に落としたのだ。序盤をゆったり入ったことで、追い風となる中盤でリズムアップできて、レースがうまく流れた。 ペースメーカーがいなくなった後も、34kmで藤曲がペースを上げると、36kmで古賀がアタック。向かい風のなかでも“攻め”の走りをする選手がいたのもポイントになった。 日本陸連の瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダーも「向かい風のなかで(先頭を)交代しながら進んだのが良かった。特にアッパレをあげたいのが古賀選手。あのスパートが西山君、鎧坂君の2時間7分台につながったと思います。風がなければもう1分良かったかもしれないね」と話していた。 またシューズの進化もあり、昨年3月のびわ湖毎日マラソンでは作田将希(JR東日本)が2時間7分42秒の初マラソン日本最高をマークするなど、日本人選手14人が2時間8分切りを果たしたことも大きい。日本人選手の“常識”が変わったからだ。 高岡寿成シニアディレクターも「近年は1km3分ペースが『速い』と思わせないような意識に引き上げられている。自分たちもできるのではという感覚が選手たちの力になっていんじゃないかなと感じています」と分析している。