最後の福岡マラソンで日本人トップを奪った“新星”細谷恭平の可能性とは…箱根5区“山登り”で鍛えた努力のランナー
今年でファイナルとなる福岡国際マラソンが5日、福岡の平和台陸上競技場―香椎折り返しコースで行われ、マイケル・ギザエ(27、スズキ)が2時間7分51秒で初優勝、日本人トップの2位には2時間8分16秒で細谷恭平(26、黒崎播磨)が食い込み、2024年パリ五輪の代表選考レースとなるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)への出場権を獲得した。また2時間6分11秒のタイムを持つ設楽悠太(29、Honda)は20キロ地点で途中棄権した。
世界基準の高速レースで2時間8分16秒
世界基準といえる「1km2分58秒ペース」の高速レースになった。スタート時の天候は晴れ、気温13.2度。師走の強い日差しが選手たちを照りつける。そのなかでも設楽、細谷、高久龍(28、ヤクルト)、上門大祐(27、大塚製薬)はトップ集団で突き進んだ。 先頭は10kmを29分39秒、20kmを59分24秒で通過する。1年9カ月ぶりのマラソンとなった元男子マラソン日本記録保持者の設楽は、レース中に左ふくらはぎを痛めたために20kmで途中棄権した。中間点を1時間2分41秒で通過すると、有力選手が次々と脱落していく。30kmでトップ集団に食らいついた日本人選手は高久だけだった。 30kmでペースメーカーが去った後は高久が引っ張るも、スピードは上がらない。遅れていた細谷が先頭集団に追いついた。 34km過ぎにギザエが抜け出し、細谷と高久が日本人トップを争う展開になった。細谷がガムシャラな走りで福岡第一高出身のケニア人ランナーを追いかけると、高久はついていけない。 細谷はギザエから25秒遅れて、2時間8分16秒の日本人トップ(2位)でゴールに飛び込んだ。高久を逆転した大塚祥平(27、九電工)が2時間8分33秒で4位、ゴール直前に転倒した高久は2時間8分38秒で5位。2時間8分56秒で6位に入った上門までが2023年秋に開催されるパリ五輪代表選考会MGCの出場権をつかんだ。 世界記録2回、日本記録8回を生んだ世界のFUKUOKA。最後の大会は高速レースとなったものの、2000年に藤田敦史がマークした2時間6分51秒の日本人最高記録には届かなかった。日本人王者も誕生せず、物足りなさが残ったが、細谷の激走は多くのファンに刻まれることになるかもしれない。 細谷は脱水症状があったため、ゴール後は担架で医務室に運ばれたが、「一番の目標が優勝でしたけど、日本人1番にもこだわりを持っていたので、そこをクリアできたのは良かったと思います」と記者会見では笑顔を見せた。