日銀・黒田総裁会見4月28日(全文1)量的・質的金融緩和を継続
物価が高まっていく根拠を教えて
ロイター:ロイター通信の木原です。2点お願いします。1点目は資源高の影響が減衰したのちには価格転嫁と賃上げによって基調的なインフレが加速するというのが展望レポートの基本的な見通しだと思うんですが、資源高の影響は、交易条件の悪化を通じて日本経済にとってはマイナスに作用しますし、ウクライナ情勢を受けてIMF等も世界経済で下振れリスクが出ているとして、見通しを下方修正しています。そうした中、日本経済には相当、下振れリスクが今後高まるようにも思われるんですが、そうした中でも23年度、24年度に需給ギャップの改善に支えられて、基調的に見たエネルギー除く物価が1.3、1.5と高まっていくとされる根拠を教えていただきたいというのが1点目です。 2点目なんですが、そうした長期的には望ましい形での物価上昇で、中長期的な予想インフレも高まっていくというのが展望レポートの見通しだと思うんですけれども、24年度、仮に今、想定してるように、基調的に見て1.5%まで物価が上昇する姿になるころには、今のようなコストプッシュのインフレではないので、今の緩和的な金融政策、YCCの修正を議論する余地は生まれるのでしょうか。
基調としての回復は変わっていない
黒田:まず前段の点につきましてはコロナ感染症の完全な収束にまだ至ってなくて、その影響がまだ続いているということで、消費などに下押しの圧力がまだ残ってるわけですけども、しかし趨勢としては消費の動きも持ち直しつつありまして、特にまん延防止措置が解除されて以降、人の動きもだいぶ増えてきてまして、サービスに対する需要も高まってきてるということで、消費、それから設備投資は堅調な企業収益に支えられてしっかりしてるというようなこともありますので、経済が回復していくというシナリオ自身は変えておりませんけれども、展望レポートでも示されておるとおり、2021年度と2022年度の実質GDPの成長率は下方修正してるわけですね。他方で、その反動として2023年の実質成長率は上方修正したということでありまして、IMF等が世界経済について当面の成長率を下方修正したということとも、平仄は合っていると思います。 そうした意味で、今回の政策委員会の大勢見通しというのはそういったことも反映しつつ、基調としての回復ということは変わっていないという考え方に基づいて見通しを示しているわけであります。もとより、当面、成長率について下振れリスクが残ってることは過去の政策委員の見通しでも示されているところでありますので、ウクライナ情勢とか感染症の動向とか、その他の状況についても十分注意していく必要があるというふうに考えております。なお、賃金についても堅調な企業収益を反映して、これまでのところ、春闘のベアも数年ぶりにかなり高い水準になっておりますので、そういったことが今後、続いていけば適切な物価上昇率になっていくというふうに考えております。 2番目の点はこれに関連するわけですけども、今回お示しした消費者物価指数、除く生鮮、エネルギーで、エネルギー価格が大きく変動してますので、それを除いたところでみた趨勢という意味では2022年度はプラス0.9%、2023年度がプラス1.2%、2024年がプラス1.5%ということで、確かに基調としての消費者物価指数が緩やかに上昇をしていくという見通しであることは事実ですけども、1.5%でも2%にはまだ届いておりませんし、それから除く生鮮食品の物価上昇率で言いますと、2024年でも1.1%という見通しでありまして、今のところ、こういう見通しのとおりであれば、金融緩和の出口を早急に探るということにはなっていないというふうに、そういう意味では粘り強く金融緩和政策を続けていく必要があるというふうに考えております。 【書き起こし】日銀・黒田総裁会見4月28日 全文2へ続く