CSファイナルSで126球1-0完封勝利したオリックス山本由伸の何がどう凄かったのか…緊張と不安を脱した修正能力
無死一塁で迎えた4番・レアードを皮切りに相手打者を2巡、18人連続で仕留め、わずか2時間23分でオリックスを勝利に導いた。 126球、4安打、無四死球、10奪三振の完封劇に、パ・リーグの野球に詳しい評論家で、現役時代は投手として阪神、ダイエー(現ソフトバンク)、ヤクルトで活躍した池田親興氏は最大級の賛辞を送る。 「エースとして期待され、絶対に勝たねばならないゲームを完封で勝利することは簡単ではない。凄いという言葉では表現できないほど素晴らしい結果。ロッテも対策を練り、ファーストストライクから積極的に仕掛けたが、彼を攻略するのは無理なのかもしれない」 もっともすべてがパーフェクトだったわけではない。その立ち上がりは、自身初の最多勝(18勝5敗)に加えて最優秀防御率(1.39)、最高勝率(.783)、最多奪三振(206)と先発投手の個人タイトル4部門を独占した球界を代表する豪腕のそれではなかった。 池田氏も「山本の立ち上がりは珍しく悪かった」と指摘した。 楽天を4安打完封して18勝目をあげた10月25日以来、中15日で臨んだ試合間隔と、絶対に負けられない責任感、緊張などが狂わせたのか。直球だけでなく決め球のフォークまでもが、やや高目に浮き、どこかおかしかった。初回は一死二塁、4回には中村の二盗阻止を狙った捕手・若月健矢の悪送球もあって二死三塁と、スコアリングポジションに走者を背負った。 「初めてのクライマックスシリーズという舞台で、チームとしては1勝を計算している初戦。山本といえども緊張もあったのだろう。力みからフォームに微妙な誤差が生まれ、右打者への内側へのストレートが抜け、アウトコースに決まるボールも少なかった」 池田氏は、そう見ていた。 だが、陥りかけた窮地で、山本は4冠王にふさわしい修正能力を見せる。ポイントとなったボールが、試合後に山本自身が、「何とか助けられたかな、と思っている」と語ったカーブだった。小学校時代に覚えた変化球である。