原巨人のCS阪神戦での衝撃ピッチドアウトの真相とは…短期決戦に強い巨人は王者ヤクルトに“下剋上”できるのか?
セ・パ、クライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージが今日10日からスタートする。セは1位ヤクルトと3位巨人が神宮で、パは1位オリックスと2位ロッテが京セラドーム大阪で激突する。ファーストステージで2位阪神を撃破した巨人は“下剋上”を果たすことができるのか。巨人で2012年より3年間、原監督のもとで1軍コーチを務めた経験がある現新潟アルビレックスBC監督の橋上秀樹氏に展望を聞いた。
原監督の勝負勘と“横綱”のプライド
短期決戦での巨人の強さを象徴するプレーがあった。たった1球でCSの流れを変えたと言ってもよかった。甲子園で阪神に連勝してレギュラーシーズンでは11ゲーム差をつけられたチームを相手に“下剋上”への第1章をクリアした巨人は、その第1戦で矢野阪神に衝撃を与えていた。1点のリードで迎えた5回無死一塁。得点圏に走者を進めたくない場面で打席に糸原を迎えてのカウント1-0からの2球目。菅野―小林のバッテリーは、アウトコースに立ち上がって典型的なピッチドアウトを仕掛けて、スタートを切っていたマルテを二塁で余裕でアウトにしたのだ。とてもバットの届かない完全なピッチドアウトに糸原はバットを振らなかったが、反応から見てベンチのサインはエンドランだった。 「あれを外すということは何か根拠が(あったのだろう)。かなり高い確率でなければ外せない」と、試合後にこの場面を振り返った矢野監督は、暗にサインを読まれ丸裸にされていたことを悔やんだ。 結局、この衝撃のピッチドアウト以降、阪神ベンチはサインを出せなくなった。機動力が「俺らの野球」だったはずのチームが翌日も、その足を封じられ、巨人に長所を殺され連敗した。
ピッチドアウトの真相に関しては明らかになっていない。一塁コーチとマルテの間にあったフラッシュサインがバレた、ベンチから矢野監督が打者に経由する三塁コーチに対して出す簡単なブロックサインが読まれた…など、様々な憶測が乱れ飛んだが、原監督のもとで“参謀”を務め“原野球”を熟知している橋上氏は、こんな大胆で、おそらく真相に近い推測をした。 「小林は巨人ベンチを見たので、バッテリーが考えて出したピッチドアウトではなく、原監督が出したサインだったと思います。でも私が知る限り、原監督の野球に、相手のサインを読んだり、丸裸にしたりすることはありません。3年間のコーチ時代に一度もありませんでした。原監督の気持ちの中で、球界の横綱であるべき巨人は、そういうことをしない。横綱は、猫騙しやけたぐりのようなことはせず、横綱相撲で四つに組み、寄り切るんだという信念があります。だから、あそこで出したピッチドアウトは、試合の流れを読んだ恐るべきと言っていい原監督の勝負勘なんです。私がコーチ時代にも何度かありました。もちろん、相手が動かずにカウントをひとつ悪くしたこともありました。でも、ここ一番で、それを成功させるのが原監督の経験と流れを見逃さない勝負勘なんです」 バントも考えられるケースで菅野は、初球を投じる前にプレートを外して、糸原の動きを探り、ボールから入ってバントがないことを確かめていた。バッテリーの慎重な探りを見た上で、そこに今季の矢野監督の采配傾向を考慮し「次やってくる」の空気を原監督が感じとったのだろうか。 その上で橋上氏は、ヤクルトとのファイナルステージで、巨人が“下剋上の第2章”を完結させる可能性をこう見ている。 「原監督は短期決戦の戦い方を知っています。ウィーラーや丸にまでバントをさせてプレッシャーをかけ、ワンチャンスの成功の可能性を上げる。チームとして腹をくくった戦略で打者に狙い球を絞らせる。しかもファーストステージで先発を一人使わずに済んだ。3位に終わったチームのモチベーションが気になりましたが、4番の丸が口にしたように引退する亀井に花道を飾らせてやりたい、故障でベンチ外となっている岡本のためにもシリーズへいくんだということで結束しているようにも感じました。坂本が逆シリーズ男になりかけていますが、丸がいいので打線が上がっていく可能性もあります。ただ巨人が日本シリーズに進出を決める可能性で言えば、“なくはない”というレベルではないでしょうか」 そして、橋上氏はこう続ける。