物価の持続的・安定的上昇に「もう一段の賃上げ必要」日銀・黒田総裁会見7月21日(全文2)
日本経済はいまだ大規模緩和が必要か
朝日新聞:朝日新聞の【ツルタ 00:35:21】と申します。金融緩和と日本経済の関係について、2問お尋ねします。6月の国債買い入れ額が過去最高額となりました。金融緩和はむしろ強化されていると見ることもできます。ただ、日本経済の状況や為替は、黒田総裁が緩和を始められた2013年春と比べて大きく変わっていると思います。緩和の継続は必要だとしても、日本経済、いまだ、今のような大規模なレベルの緩和、必要な状況という認識でしょうか。お考えをお聞かせください。 もう1つ、同じような質問になりますが、黒田総裁は前回の会見で、金利を上げると、あるいは金融を引き締めると、さらに景気に下押し圧力を加えることになってしまうとおっしゃっています。それは基本的にそのとおりだと思いますが、その影響は引き締めの程度にもよると思いますし、緩和によるさまざまな副作用も指摘されています。緩和をどの程度やめると、今の日本経済にどれほどマイナスな影響を与えるのかといった、具体的なシミュレーションをされているのでしょうか。教えていただけますでしょうか。 黒田:まず、先月の国債買い入れが大きく伸びたのはご承知のように、日本銀行の金融政策が転換するんじゃないかっていう思惑から、投機的に国債を【***モノトカ 00:36:46】先物で売る動きがあって、それがイールドカーブ・コントロールの趣旨に合わない、10年後の国債の金利が例えば0.25%を上回って上昇したりするということが起こりましたので、連続指値オペ等でこれを回避したということで、一時的に国債の買い入れが大幅に増加したっていうことであって、何かそれによって、さらに金融緩和大幅にしたとか、そういうものではありません。
金融に大きな影響を与えうるのは金利
もともとイールドカーブ・コントロールの下では、国債買い入れ額というのは従属変数であって、イールドカーブ・コントロールする下で必要なだけ幾らでも買い入れますっていってるわけですから、政策変数として金融に大きな影響を与えうるのは、あくまでも金利であります。 そういう意味で、確かに予想物価上昇率が上昇していきますと、実質金利がさらに低下しているという可能性はあるわけですね。もっとも、その予想物価上昇率もいろいろな数字があって、必ずしも一時的に決まるものでもありませんし、それぞれ、短期、中期、長期のいろんな予想がありまして、家計、市場、あるいは企業の予想とか、専門家の予想とかいろいろあって、必ずしも一概に言えませんけども、予想物価上昇率が上昇してることは事実ですので、イールドカーブ・コントロールで名目金利を安定させてますので、実質金利がやや低下して、金融緩和の効果が少し大きくなってることは事実だと思いますけど、それはイールドカーブ・コントロールっていうものの持つもともとの性質で、ある意味では当然であるし、必要であり、望ましいことだというふうに思っております。 2番目の、金利の引き上げうんぬんについては、点検でもかなり詳しく数字的なものを示しておりますし、どのくらいの、金利の引き上げがどのくらい景気を下押しするかっていうのは、もちろん計算はできますけども、あくまでも経済モデルでやる計算でありまして、今の時点で金利を上げたとき、どういうインパクトがあるかっていうのは、それはおそらく、モデルで計算したものよりもかなり大きなものになりうると思いますので、私どもとしてはイールドカーブ・コントロールの下に金利を引き上げるつもりはまったくありませんし、プラスマイナス0.25%というレンジも変更するつもりはまったくありません。 今の時点では、やはり粘り強く金融緩和を続けて、先ほど来申し上げてるように、コロナ感染症からの回復途上にある経済を支え、さらに交易条件の悪化で国民所得が海外に流出するわけですので、景気の下押し効果がありうるので、そういった二重の意味で経済をしっかり支えて、企業収益、賃金、物価が緩やかに上昇していくっていう好循環を実現するためにも、金融緩和を持続していく必要があるということ。これは、今回の決定会合でもみんなが同意した点であります。