「必要な時点まで金融緩和を継続」日銀・黒田総裁会見7月21日(全文1)
日銀の黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の21日午後、記者会見を行った。 ※中継機材不調のため、記者会見の冒頭部を除いて書き起こしを行っております。ご了承ください。 ◇ ◇
雇用・所得環境は全体として緩やかに改善
黒田:に関しても現状維持とすることを全員一致で決定しました。本日は展望レポートを決定、公表しましたので、これに沿って経済・物価の現状と先行きについての見方を説明します。 わが国の景気の現状については資源価格上昇の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐ下で持ち直していると判断しました。やや詳しく申し上げますと、海外経済は一部に弱めの動きが見られるものの、総じて見れば回復しています。輸出は基調としては増加を続けていますが、供給制約の影響を受けており、鉱工業生産はその影響から下押し圧力が強い状態にあります。企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は横ばいとなっています。こうした下で設備投資は一部業種に弱さが見られるものの持ち直しています。 雇用・所得環境は一部で弱めの動きも見られますが、全体として緩やかに改善しています。個人消費は感染症の影響が和らぐ下で、サービス消費を中心に緩やかに増加しています。金融環境は企業の資金繰りの一部に厳しさが残っていますが、全体として緩和した状態にあります。 わが国経済の先行きですが、見通し期間の中盤にかけてはウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐ下で回復していくとみています。その後は所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まる下で、潜在成長率を上回る成長を続けると考えています。
わが国経済を巡る不確実性は極めて高い
次に物価の現状ですが、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比はエネルギーや食料品の価格上昇を主因に2%程度となっています。また予想物価上昇率は上昇しています。物価の先行きについては、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、本年末にかけてエネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想しています。この間、変動の大きいエネルギーも除いた消費者物価の前年比はマクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていく下で、プラス幅を緩やかに拡大していくとみています。 前回の見通しと比べますと、成長率については2022年度が海外経済の減速や供給制約の強まりの影響などから下振れていますが、その後は反動もあって幾分、上振れています。物価については輸入物価の上昇やその価格転嫁の影響から足元を中心に上振れています。リスク要因を見ますと、引き続き内外の感染症の動きやその影響、今後のウクライナ情勢の展開、資源価格や海外の経済・物価動向など、わが国経済を巡る不確実性は極めて高いと考えています。その下で金融・為替市場の動向や、わが国経済・物価への影響を十分注視する必要があります。 経済見通しのリスクバランスについては当面は下振れリスクのほうが大きくなっていますが、その後はおおむね上下にバランスしているとみています。物価見通しについては当面は上振れリスクのほうが大きくなっていますが、その後はおおむね上下にバランスしているとみています。 日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。その上で当面、感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しています。以上です。