米FRBが0.75%の大幅利上げ 今後の利上げペースはどうなる?
米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を0.75%引き上げることを決めました。記録的といわれるインフレ抑制が狙いで、1994年11月以来、27年ぶりの大幅利上げとなりました。今後の利上げペースはどうなるのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【写真】「悪い円安論」にウクライナ情勢で物価上昇も…マイナス金利撤回も視野
FOMC直前に75bpの利上げ観測記事
6月16日午前3時(日本時間)に発表された6月FOMC。結果は75bp(ベーシスポイント、1bp=0.01%)の利上げ決定でした。利上げ幅は6月上旬時点で50bpが広く予想されていましたが、FOMC直前の6月14日に米紙が6月FOMCの利上げ幅が75bpになるとの観測報道を報じていたため、その報道対比では想定内の結果となりました。FRBが急きょ75bpの利上げに動いた背景には、6月10日に発表された5月の米消費者物価統計が予想以上の上昇率となったことがありました。消費者物価指数は前年比+8.6%、食料・エネルギーを除いたコア物価も+6.0%と高止まりしました。 パウエル議長の記者会見では「次回7月FOMCも、利上げ幅は50bpか75bpの判断になる可能性が高い」として積極的な利上げ方針が示されました。一方で75bpの利上げ幅についてはそれが異例であるとの認識が示され、インフレ沈静化の兆しが強まった際に利上げ幅縮小の用意があることも暗示されました。
2022年末のドットチャートは上方シフト
FOMC参加者が示す政策金利見通し、いわゆるドットチャートが示唆する政策金利(中央値)は、2022年末(誘導目標レンジの上限)が3.500%、2023年末が3.875%、2024年末が3.500%でした。2022年末の数値は前回3月に示されたものから1.5%も上方にシフトしました。また中立金利(景気を加速・減速させないと見込まれるレベルの金利)は2.5%へと3月時点の2.4%から上方にシフトしました。3月から全18人の参加者構成が若干変化しているため単純比較はできませんが、分布の形状から判断すると、新たに加わった2人(クック理事とジェファーソン理事)が2.5%に置いたとみられ、これによって中央値が上昇したと判断されます。 ドットチャートから判断すると、2022年における各FOMCの利上げ幅は7月に75bp、9月に50bp、11月に25bp、12月に25bpという姿が浮かび上がります。仮にこうしたシナリオが実現に向かうのであれば、8月に開催予定のジャクソンホール講演は75bpの利上げ幅を50bp以下に落とすことを説明する場になるのではないでしょうか。それまでに入手可能な消費者段階の物価統計や人々の予想インフレ率(ミシガン大学調査、NY連銀調査)などインフレ関連データが市場参加者の注目の的になるでしょう。