物価の持続的・安定的上昇に「もう一段の賃上げ必要」日銀・黒田総裁会見7月21日(全文2)
今の時点で世界的不況を前提にする必要はない
海外経済については、展望レポートにも書いてありますように、特に欧米の高インフレで金利の引き上げが始まってるわけですが、それが続いた場合に欧米の成長率がある程度減速するんじゃないかということはいわれてますし、それは、そういうことはありうるとは思うんですけども、何かリセッションになるとかスタグフレーションになるとか、そういうことまで考える必要は今のところはないのかなと。それは国際機関などの見通しを見ましても、当方の国際局なんかの見通しなんかを見ましても、世界経済全体として過去の平均の3%程度の成長というのは見込めるわけですので、そこはリスクはあると思いますけども、今の時点で何か世界的な不況とか、そういうことを前提にする必要はないだろうというふうに思っております。 それから、この物価の固有のリスクとして挙げている為替相場の変動、あるいは国際商品市況の動向、その輸入物価や国内価格への波及っていうのは、これは上振れ、下振れ、両方の要因があると思うんですけども、もちろん短期的には国際商品市況が上がったり為替が円安になったりすると、輸入物価とか国内価格への上振れの影響がありうるわけですけれども、為替相場がどういうふうに動くかっていうのはまったく今のところ分かりませんし、これは為替相場はいつもそうなんですけども。 ですからIMFやOECDなんかも経済見通しを作るときには、為替については現状を延ばすしかないということで、前提でやってますので、それがもし円高になったり円安になったりすればいろんな影響が出てくると思いますけども、今から物価の引き上げのほうに一方的に影響するというふうには、為替がそもそもどっちにいくか分かりませんから、言えないと思います。
先物市場の動向を前提に見通しを作っていると思う
なお、国際商品市況については、これはまたIMFとかOECDでもそうですけども、先物価格を見てやるわけですね。そうすると、ご承知のように石油とかなんかは先物価格が緩やかに下がっていくっていう見通しになってますので、それを普通、ベースにして見通しを、それ以外に前提するものがありませんので、そうするわけですね、国際機関であれ各国の中央銀行であれですね。ただ、実際に国際商品市況がそうなるかどうかっていうのは、これはまたウクライナの状況とかなんかにもよりますので分かりませんが、一応ベースラインとしては下がっていくというのを皆さん前提にしてると思いますが、これはもし、例えばウクライナ戦争がさらに激化したり、いろんな要因で国際商品市況が上がれば、それは輸入物価の上昇につながるということになると思いますが、今のところ国際機関も含めてそういうふうには見てないと。先物市場の動向を前提にして見通しを作っておられるというふうに思います。