物価の持続的・安定的上昇に「もう一段の賃上げ必要」日銀・黒田総裁会見7月21日(全文2)
日銀の黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の21日午後、記者会見を行った。 ※中継機材不調のため、記者会見の冒頭部を除いて書き起こしを行っております。ご了承ください。 ◇ ◇
物価が2%程度持続的・安定的に上昇するには賃上げが必要
黒田:そういう意味で、賃上げの現状について、先ほど申し上げたように、確かにベアが連続して実現し、今年度のベアも2%を少し上回る程度になり、夏のボーナスは2桁といわれておりますし、これは大企業のデータですけども、中小企業もほぼそれに倣ったような形になってるっていうことで、確かに賃金の上昇が進んでいることは事実なんですけども、他方で今起こっている、この2%程度の消費者物価に追い付いているかといわれると、まだ追い付いてないということですので、やはりもう一段の賃金の上昇というものが必要であると。それは冬のボーナスなのか、来年の春闘その他の賃上げの状況なのか、いろいろありうると思いますけど、いずれにせよ、もう一段の賃上げが経済の持続的な成長の下で、物価が2%程度、持続的・安定的に上昇するっていう形になるためには、賃金のもう一段の上昇が必要であると。 そのためにも、やはり日本銀行として引き続き、しっかりと経済を支えるために金融緩和を続けていく必要があると。それによって経済が拡大し、企業収益が増え、そして労働需給がよりタイトになっていくという中でもう一段の賃金上昇が実現していくということを期待しているわけです。
2%目標の達成に近づいているのか
ロイター通信:ロイター通信の木原です。2点お願いします。1点目は、先ほどお話にあったように賃金の上昇が必要であるという。その背景として消費も重要ですが、消費については今回、判断を前進にさせて、景気についても少し前向きに判断をしたと思うんですが、加えて予想インフレについても中長期で上がっていると。一方で海外の経済については、市場ではアメリカがリセッションに陥るのではないかですとか、中国では厳しいゼロコロナ政策で経済の減速懸念が高まっています。こうしたバランスを全体で考えた場合に、今はまだ見通せない持続的・安定的な2%の物価安定目標の達成に、4月対比で近づいているという判断ができるのか、そこはちょっとまだ変わらないのか、その辺、経済の、とか物価の上振れ・下振れリスクを考慮に入れた上で、どう考えていらっしゃるのかが伺えればというのが1点目です。 その上で2点目なんですが、展望レポートの物価のリスク要因のところで、世界的なインフレの高まりですとか為替の急激な変動というのが物価に影響を及ぼしうるという言及があるんですけれども、これはどちらも、どちらかというと日本の物価の上振れに働くようにも思えるんですけれども、そういう理解でいいのか、その背景、どういう物価へのリスクというふうに考えればいいのか教えてください。 黒田:まず第1点ですけれども、これはいろいろあると思いますが、総括して申し上げますと、この今回の展望レポートの文章にもあるように、そしてその背景となった政策委員の大勢見通しにもあるように、消費者物価の見通しは少し上振れですね。それから実質成長については2022年度を中心に下振れてるというような状況であります。 その中で消費が、感染症の影響が和らぐ下で回復してると。特にサービス業が今、回復してるということは事実なんですけれども、それが続くためにも賃金の上昇っていうものがしっかりないと、今の時点ではもちろんペントアップデマンドとか、それから累積した貯蓄とか、そういうものに支えられてペントアップデマンドが次第に出てくるということだと思いますけども、消費が長続きするためには、やはり賃金の上昇、賃金が物価の上昇を上回って伸びていかないと、なかなかそれは続かないというふうに思いますので、そこは十分、よく見ていく必要があるというふうに思っております。