“教育格差”是正に向けた1つのヒント 個別指導型オンライン学習のメリデメ
コロナ禍の中、学校が一斉休業となりました。そして、物理的に学校へ行くことが難しい状況下、オンライン授業にスポットライトが当たりました。対面授業に比べ、オンラインを使った教育にはどのような特徴があるのでしょうか。貧困や家庭内不和などにより教育機会を失ってしまった児童・生徒を対象とした食事付きの個別指導型無料塾「ステップアップ塾」(東京・新宿)でもオンライン授業を4月から取り入れました。この間の経験から、塾長の濱松敏廣さん(43)にオンライン学習のメリット・デメリットについて分析してもらいました。 ***
教育格差是正の一助となるべく活動を続ける当ステップアップ塾は例年通り4月から1年の教育サポートを開始した。いつもと違うのは、授業がオンラインを通じてである点。 当初は緊急事態宣言を受けた暫定措置として8月末までの予定だった。しかし、講師である学生らが在籍する大学側からの人と接するボランティア活動への自粛要請、感染拡大が続く都内の現状を鑑み年度内の塾活動はオンライン授業のまま継続することを決定した。 非常時でも最善の策を追求してきた非営利塾運営の視点から、オンライン学習のメリット・デメリットを考察し、問題点を浮き彫りにさせることはIT後進国と揶揄される我が国における一筋の光明、もしくは提言になり得るかもしれない。 今回はそんな想いを込めて、次世代の教育を憂う団体の運営者目線で書いてみたいと思う。
理解度に関わらず進級
朝日学生新聞社が生徒や保護者を対象に行った調査(4月下旬~5月初旬)によると、コロナ禍で休校要請に応じた小・中・高校の中で、リアルタイムでのオンライン授業を導入することができた教育機関は、1割にも満たなかったという。それに比べて有料塾では4割弱がオンライン授業を実施した。このことは何を意味するのだろうか。 筆者は、休校期間が続いた数か月により、数年後には爆発的な規模で新たな教育格差が広がる可能性が生まれたと見ている。なぜなら休校要請の時期に学校で出された課題のほとんどは「自学(児童・生徒が自主的に学習すること)」を基本としているため、子どもたちの理解度に関わらず「教えたこと」にされてしまうからである。しかし、実態は有料塾に通うなどで補完的な教育を受けることができた児童・生徒に比べ、そうでない児童・生徒は事実上“置いてきぼり”状態となる恐れがあるのだ。 私が代表を務める無料塾では2014年の設立以来、教育格差是正を目的に掲げて活動を続けている。そのため、子どもたちが勉強に苦手意識を持つ流れや教育格差を生み出す下地がどのように作られていくのか、おおよそではあるが把握している。そしてその状況は、休校期間中に学びのレールから取り残されてしまった児童らと多くの共通点があるのだ。 まず彼らに共通して見られる傾向を、算数・数学を例にまとめてみたのでご確認いただきたい。