スマホに写る地雷の影…日本の新型探知器でウクライナ復興支援へ #ウクライナ侵攻1年
ALISの開発者・佐藤さんは今年3月で東北大学を定年退職する。だがALISの改良は今後も続けるつもりだという。長年の研究開発で得られたのは技術的な成果だけではない。 「2010年、カンボジアでALISを使った地雷除去活動が行われた地域を半年後に再訪したところ、稲作田に変わっているのを目にしました。嬉しかったですよ。1991年に内戦が終わった後も地雷のために人が入れず、草木が茂ってジャングルのようになった土地を再び畑に戻せたんですから」
ポチャニンさんは、地中レーダーの専門家として、ウクライナの現地で活動ができない佐藤さんの代わりにALISの微調整などを担当する予定だ。 「解放された土地での地雷除去も進行中です。ALISが役立ってくれるのは間違いありません」(ポチャニンさん) 地雷は多数の無辜の一般市民を巻き添えにする無差別兵器だ。紛争が終わった後も苦しむ人々が後を絶たず、現地の復興にも影を落としかねない。新しい技術による効果的な地雷除去という活動を通じて、ウクライナの地雷被害者を減らし、少しでも復興につなげる。まだまだ続く戦火の中、そんな国際貢献への取り組みが始まろうとしている。
------- 緑慎也(みどり・しんや) サイエンスジャーナリスト。1976年、大阪府生まれ。出版社勤務後、月刊誌記者を経てフリーに。科学技術を中心に取材・執筆活動を続けている。著書に『13歳からのサイエンス』『消えた伝説のサル ベンツ』(以上、ポプラ社)、『認知症の新しい常識』(新潮新書)、共著に『太陽家の謎を説く』(新潮選書)、『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』(講談社)、『ウイルス大感染時代』(KADOKAWA)など。近著に『超・進化論 生命40億年 地球のルールに迫る』(講談社、NHKスペシャル取材班との共著)