スマホに写る地雷の影…日本の新型探知器でウクライナ復興支援へ #ウクライナ侵攻1年
2019年、佐藤さんらは株式会社ALISys(アリシス)を設立、ALISを商用化した。大学の研究ではわずかな台数のALISしか使えなかったが、商用化すればODA(政府開発援助)などを利用して、より多くの地雷被災国に導入する道が開けるからだ。 2021年にはカンボジアから連絡があった。カンボジア地雷対策センター(CMAC)は地雷・不発弾除去の中心的役割を担う政府機関だが、そのCMACが日本政府に対し、ALISの提供を正式に要請したのだ。カンボジアではCMACが東北大学から貸与されたALISの2機で、2009~18年に地雷を89個検知し、254,867平方メートルの土地で除去を実施した。
日本の研究を思い出したウクライナの研究者
昨年6月、佐藤さんの元に新たな支援要請が届いた。ロシアとの戦闘が続くウクライナからだった。SNSを通じて連絡してきたのが、冒頭で紹介したポチャニンさんだ。実は、ポチャニンさんはウクライナ科学アカデミーの研究者で、佐藤さんと同じく地中レーダーの技術を地雷探知に応用する研究を進めていた人物だ。 <私の母国ウクライナは独立を維持するために戦っています。私たちはこれから長い年月をかけて、領地から地雷を除去しなければなりません>(ポチャニンさんが佐藤さんに宛てたメッセージより) ポチャニンさんは2018年10月にイタリアでの国際学会で佐藤さんと会った時のことを振り返る。
「佐藤さんにはその場でALISのデモを見せてもらっていました。ですから、昨年4月、ウクライナ軍がハリコフ州を奪還し始めて間もなく地雷対策に直面した時、思い出したのがALISでした。ALISの最新情報を得るために佐藤さんに連絡したんです」 佐藤さんはALISに関する論文リストをポチャニンさんに送った。もっと何かできることはないかと思案したが、大学の研究者がウクライナ問題に首を突っ込むことにためらいもあった。そこで「ALISをウクライナに提供したい」と話を持ち込んだのが、JICA(独立行政法人国際協力機構)だった。