スマホに写る地雷の影…日本の新型探知器でウクライナ復興支援へ #ウクライナ侵攻1年
除去だけでなく…負傷者支援や啓発活動も必要
「国際的な支援は地雷除去に偏りがちです。しかし仮にすべての地雷を取り除いたとしても被害に遭った人がいなくなるわけではありません」 NPO法人「難民を助ける会(AAR Japan)」で地雷問題を担当する紺野誠二さんは、戦争の負傷者や地雷の被害者といった人に対する支援も充実させるべきだと強調する。
「今回のロシアによる侵攻では、地雷による犠牲者も含めて、今年2月5日までに民間人だけで7155人が亡くなられ、1万1662人が負傷されている。負傷者の中には障害を負った方も、これまで通り働けない方もいらっしゃるでしょう。彼らに対する支援を考える必要があります」 紺野さんは、2000年に英国のNGO「ヘイロートラスト」に出向し、コソボで8カ月間の地雷除去活動を行ったことがある。その経験を踏まえ、「地雷除去の専門家として元軍人を多く擁する欧米の団体に実際の除去活動を任せるほうが合理的」と指摘する。 地雷の危険性への啓発活動も重要だ。2014年のクリミア危機の際、ウクライナの東部地域では年間300人ほど地雷の死傷者がいたが、啓発によって次第に減ってきたという。 「国際NGOによる地雷除去活動や被害に遭わないための教育が実施されたおかげか、2021年には年間58人まで減少していた。ところが、そこに今回のウクライナ侵攻が起きた。また啓発活動が必要になっていきますし、実際に行われています」 ウクライナの場合、除去活動を20年以上行っても今なお地雷が見つかるカンボジアより、はるかに広大な領域が地雷に汚染されているとみられる。ウクライナの地雷除去には途方もない年月がかかるだろう。 だからこそ、ウクライナは地雷除去活動の経験者であるカンボジアを頼ろうとしている。
探知器でかつての地雷原が畑に「嬉しかった」
JICA平和構築室副室長の山下望さんは、前述のカンボジアでの研修に参加した際、印象的な出来事に遭遇したという。 「CMACの副長官がポル・ポト政権時代に親兄弟を殺害された経験の話をしました。そのとき、ウクライナの隊員たちが深くうなずいていたんです。彼らは地雷によって仕事仲間を亡くしたり、ロシア軍の攻撃によって多くの国民が殺されたり、親族と引き裂かれたりしており、地雷除去の同業者といった関係のみならず、悲惨な経験も共有していることを痛感しました。そこに現代の日本人はなかなか入り込めませんが、日本が彼らを結びつけるきっかけをつくれた意義は大きいと思いました」