スマホに写る地雷の影…日本の新型探知器でウクライナ復興支援へ #ウクライナ侵攻1年
ロシアによるウクライナ侵攻から1年。いまだ戦闘が続くが、脅威は戦車やミサイル攻撃以外にもある。ウクライナ東部を中心にロシア軍が残していった「地雷」だ。一般市民も犠牲にするこの無差別兵器を除去するため、日本はウクライナに対し新型の地雷探知機を提供。また、これまで20年以上にわたり地雷除去に取り組んできたカンボジアと協力し、ウクライナの支援に乗り出した。この取り組みに関わってきた日本やウクライナの関係者を取材した。(文・写真:サイエンスジャーナリスト・緑慎也/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
国土の4分の1に埋められた地雷
「地雷の爆発で誰かが吹き飛ばされたというニュースを毎日のように耳にします。犠牲者で多いのは工兵部隊の兵士のほか、トラックの運転手、自宅に戻ろうとした住民、森で遊んでいた子どもたちなどの市民です」 今年2月、メールでの取材にそう答えたのは、ウクライナ北東部のハルキウ市に住むゲンナジー・ポチャニンさんだ。
ポチャニンさんによると、1月14日にはドニプロで9階建ての集合住宅がミサイル攻撃に遭い、約100人が死傷。彼が住むハルキウ市も2月13日、住宅やエネルギー施設などにミサイル12発が着弾したという。「戦争は進行中なのです。だから『もっと武器があれば状況を変えられる』という声が上がるのも理解できます」 1年前、ロシアと国境を接するハルキウ州はロシア軍の猛攻を受けた。ウクライナ軍の反攻により昨年9月までにほぼ全州域が取り戻されたが、平穏な生活は戻っていない。それは空からのミサイル攻撃だけではなく、ロシア軍が撤退時に各地に地雷を残したからだ。 「ハルキウ州だけではありません。撤退前、彼らは地雷を手で埋めたり、砲弾の発射装置で散布したりしました。奪還した土地の多くが地雷で『汚染』されたのです」 対人地雷は、人が踏むと信管と呼ばれる起爆装置が作動して爆発する。兵士の殺傷などに加え、進軍を止めたり遅らせたりするための兵器だ(サイズの大きな対戦車地雷もある)。しかし、長く地雷の犠牲者となるのは一般市民だ。軍が撤退した後、知らずに歩いて命を落とす。あるいは、一命をとりとめても手足を失ったりする。その残虐性、無差別性から「悪魔の兵器」と恐れられる。直径10センチ、厚さ4センチほどの円筒形が対人地雷の典型的な形状だ。地雷や不発弾などによる世界の被害者数は2021年1年間で5544人に上る(「Landmine Monitor 2022」より)。