犠牲者22万人超、史上最悪のインド洋大津波から20年 今も残る深い傷と私たちが学んだこと
2004年12月26日、M9.1の地震発生から20分で高さ50mの大津波、史上最悪の鉄道事故も発生
2004年12月26日、スパラット・スリラオさんは、3歳の息子と一緒にタイのカオラックにある自宅にいた。家は海に近かった。午前10時半頃、彼女は奇妙なものに気づいた。「海から黒い波が押し寄せてきたのです」とスリラオさんは当時を振り返る。 ギャラリー:死者22万人超、インド洋大津波の深い傷 写真7点 「私が子どもを抱え込んでいると、波が到達してドーンという音が聞こえました。波が上から襲いかかってくるのが見えました。子どもは波にさらわれてしまい、私は波の下に引きずり込まれました。私は溺れながらご先祖様にお祈りをし、『生き延びなければ。生き延びなければ。生き延びて、息子を見つけなければ』と考えていました」 2004年のインド洋大津波では数百万人が被災した。史上最多の死者を出したこの津波では、インドネシア、スリランカ、インド、タイなどで22万5000人以上が命を落とした。 20年が経過した今も、津波の爪痕は深く残っている。犠牲者がここまで多くなった原因は何なのだろうか? 地域社会は次の津波にどのように備えているのだろうか?
津波に対する備えの不足
津波は、地殻変動によって海が乱れ、一連の大きな波が陸地に向かって押し寄せる現象だ。海底を震源とする地震が原因となることが多いが、地すべりや火山噴火なども引き金となる。 世界の津波の80%は、「環太平洋火山帯」と呼ばれる地震活動が活発な地域で発生している。 人間の力で津波は防げない。だが、津波に備えておけば被害を最小限に抑えられる。津波予報は1941年に日本の仙台地方気象台で始まった。歴史的に津波の被害を多く受けてきた太平洋沿岸の三陸地方を対象に、津波の兆候が観測されると、地元のラジオ局を通じて警報が発せられた。 今では、国際的に管理された津波検知システムが太平洋沿岸の水位を測定し、津波が接近しているおそれがある場合には警報を発して、沿岸地域の住民が津波の到達前に避難できるようになっている。 太平洋とは対照的に、2004年当時、インド洋沿岸の小さな市や町に暮らす15億人を守るための津波検知システムは存在していなかった。この地域では津波はまれにしか起こらず、津波による死者も少なかったからだ。 インド洋では、1852年から2002年の間に記録された50回の津波のうち、死者が出たのは7回だけで、150年間の犠牲者の合計は5万人を下回っていた。 そのためインド洋沿岸地域では、日本のように学校で定期的に津波避難訓練を行ったり、津波の前の地震に備えて建物を耐震化したりするなどの対策がされてこなかったのだ。