日銀・黒田総裁会見3月18日(全文2)今後も粘り強く緩和を続ける必要がある
物価上昇が一時的である確率は
日本経済新聞:日本経済新聞の【ミナミ 00:46:19】と申します。私から物価と為替について、それぞれお伺いさせてください。まず物価のところです。黒田総裁、先ほど4月以降物価が2%程度まで上昇してくるというふうにおっしゃいましたが、一方で従来、供給制約による物価というのは一時的であるということもおっしゃられていたかと思います。現在もこうした認識に変わりがないのか、その上で認識、物価上昇が一時的であると引き続きご覧になる場合、その実現可能性、確率を今どのようにみていらっしゃるのか、過去、第1次・第2次オイルショックもありましたし、リーマンショック前も原油も上がっておりました。こうした歴史観を含めて、総裁のご見解をお伺いさせてください。 もう1つは為替のところなんですけれども、おっしゃるように円安、総じてプラスで、確かに経常収支も黒字で、海外進出している企業の収益も押し上げられるかと思うんですが、一方で恒常的に食料品の値上げ等を通じて家計にはしわ寄せが寄りやすいかと思います。国民経済全体を考えたときに、家計という意味では円安の影響を受けない人というのは基本的にはいないかと思うんですが、円安がプラスという場合に、そもそもの円安のコストというものをどのように整理されていらっしゃるのか、これをお尋ねさせてください。 もう1個、最後、すいません、総裁ご自身、まさに家計を構成するという意味では、総裁ご自身もそのお1人かと思うんですが、実際に生活される中で、例えば身近に物価が上がってきたなですとか、あるいはこのコストの上昇がちょっと心配だなですとか、ぜひ想定答弁でないところで率直なご感想をお尋ねさせてください。
長期に持続するものではない
黒田:先ほど来申し上げているとおり、現在のようなエネルギー、食料品の国際的な価格の上昇というものが輸入物価の大幅な上昇、そしてそれが消費者物価に転嫁される部分もありますので、消費者物価の上昇率が4月以降、2%程度になる可能性もあるというふうに思っておりますけども、今申し上げたような状況からいって、その影響は長期に持続するものではないというふうに思っております。基本的にそういった国際商品市況の高騰による輸入物価の上昇というのは、そういったものを輸入に頼っている日本としてはプラスの面がなくて、マイナスの面があるわけですので、企業収益とか家計の実質所得等にマイナスの影響を与えますので、そういったものが持続する可能性は薄いというふうに思います。 ただ、消費者物価の対前月上昇率で言うとそういうことですけども、普通、対前年同月比で比べますので、いったん水準の上がったところから、そういった国際商品市況が下がってくれれば、それに応じて水準も下がるということはあり得ますけども、水準が下がらなければ、どんどん上がっていかなくても下がらなければある程度の期間、対前年同月比の消費者物価には影響が残ると思います。 ただ、それは前月との比較でどうかと言われたら、そういうものは前月との比較で上昇していくっていうものではないと思いますけど、消費者物価は普通、対前年同月比で見ますので、それで見る限り、持続しないといっても、1カ月ですぐ、どんと元の水準に戻ってくれるかどうかっていうのは、それは国際商品市況自身が下がってくれない限り、そういうことはなかなか起こらないと思います。 ただ、いずれにせよ、その効果は持続するものではないということは確かですので、そういったことに対して、特にわが国のような場合、持続的なものでないそういうコストプッシュ型のものに対しては、2次効果、波及効果を容認するものではありませんけれども、それ自体として消費者物価に反映されてくるものについて、それは基本的には一時的なものであって持続するものではないというふうに思っております。 歴史的な話は、これは学者の方がいろいろ分析しておられますけれども、第1 次石油ショックでなんでこんなに物価が上がっちゃったかっていうのについては、有名な小宮隆太郎先生の論文がありまして、要するに石油ショックが非常に大きな物価上昇率をもたらしたのではなくて、その前に過大な金融緩和をしてたからだっていう分析になっていますし、他方で第2次石油ショックのときは、そういったことは起こらなかったわけでありますね。 【書き起こし】日銀・黒田総裁会見3月18日 全文3へ続く