日銀・黒田総裁会見3月18日(全文2)今後も粘り強く緩和を続ける必要がある
政策修正の必要性をまったく意味しない
そしてそれがさらに物価の上昇をもたらすという2次的な波及があるということであれば金融政策ということもあり得ますけども、日本ではそういう状況にまったくないと。 欧米、特に米国の場合はご承知のように景気回復が極めて急速で、労働市場がタイトになって賃金も相当、上昇していますし、予想物価上昇率も上昇しているという下で、もともともう金利を引き上げるっていうことを決めておられたようですけども、今回のウクライナにおけるロシアの侵攻を踏まえて、エネルギー価格とか何かがかなり急速に上がっているっていうことを踏まえて金利を引き上げ、実際に引き上げに踏み切られて、さらに今後も段階的に引き上げていくということを示されているので、それは大変合理的で当然だと思いますけども。 わが国の場合は、先ほど来申し上げたように、仮に商品市況の上昇によって輸入物価が上がって国内の物価も2%程度になったとしても、それはまさにコストプッシュ型ですので、当然のことながら、長期的には企業収益の減少とか、家計の実質所得の減少っていうことに通じて、景気をむしろ後退させる方向に向かって、物価を押し上げる方向にならないというふうにも思っておりますので、4月の物価がどうなるかはまだ分かりませんけども、2%程度になる可能性はあると思いますので、そう申し上げたわけですけども、そのことは現在の金融政策を修正する必要性をまったく意味してないというふうに思います。
前向きの循環メカニズムの機能に不確定要素があるのか
時事通信:時事通信の伊藤です。先ほど、総裁、経済が基調的な回復してくる中で企業収益も伸びていると。これまでは順調であるというご認識を示されましたけれども、今回の公表文の中で、先行きに関して、前向きな循環メカニズムという表現が、今回の中で触れられてないんですけれども、これは先行きを考えたときに、前向きの循環メカニズムというのが機能していくというには、少し不確定要素があるのか。その取った理由と、もしそれが先行きで前向きな循環メカニズムと言える状況とちょっと変調が来してるんだとするならば、それはどういった理由からかっていう、その点をお伺いしたいんですけれども。 黒田:別にそういった、基調的な、前向きの循環メカニズムが変化してるとは思っておりません。今後の中長期的な経済・物価の見通しについては、4月の金融政策決定会合で展望レポートでお示しするっていうことになると思いますけども、先ほど来申し上げているとおり、コロナ感染症のほうはようやく落ち着きを取り戻し、政府もまん延防止等の措置を予定どおり終了するということでありますので、消費が弱めだったところは徐々に回復していくんじゃないかと思っております。 それから企業の収益は比較的順調に伸びておりますし、それから海外経済も今回のウクライナ状況の影響も受けつつも、先進国も新興国も比較的経済成長は高い率、潜在成長率を上回るような上昇を続ける見込みでありますし、輸出、それから生産等も、先ほど申し上げたように回復基調が続くというふうにみておりますので、その下で、企業部門でも収益を賃金等で還元するとか、あるいは設備投資を今後とも積極的に行っていくとか、そういったことは続いてくれるのではないかと。 先ほど来申し上げておりますとおり、これまでのところ、今年の春闘は大変順調であるように思いますので、そういったことも含めて、全体としての前向きのメカニズムっていうのは基本的に続いていると思いますけれども、やはりこのウクライナ情勢っていうものがどのように展開していくかっていうのは実際のところ、なかなか見通し難いところもありますので、そういったことには十分、注意していく必要はあるというふうには思いますけれども、現時点で前向きの循環メカニズムがもう損なわれてしまったということではないというふうに思っています。