ついに契約件数「大台突破」の楽天モバイル、それでも黒字化を阻む「ある数字」とは
先月21日、ついて契約回線数800万件突破を公表した楽天モバイル。黒字化達成の1つの「目安」とされている数字を突破したことで、長らく続いた同事業の赤字もいよいよ終わりを迎え、楽天グループ財務状況も改善に向かうのかと思いきや、事態が好転するにはまだまだ時間がかかるかもしれません。楽天モバイルの黒字化や同グループの財務状況の健全化に立ちふさがる壁とは何か。企業アナリストの大関暁夫氏が解説します。 【詳細な図や写真】楽天モバイルは2023年1月から法人契約プランを開始した(出典元: Koshiro K / Shutterstock.com)
楽天モバイル契約者「爆増」の背景とは
今年8月の2024年度第2四半期の決算で三木谷浩史社長が強調したのは、グループ決算における赤字の元凶であるモバイル事業において契約回線数が爆発的に伸び、その効果もあって連結営業利益で276億円改善して赤字幅が118億円に縮小したことでした。 グループ決算の足を引っ張ってきたモバイル事業での巨額赤字が止血に向かったことに市場も好感し、過去に500円台前半にまで下落した株価が一時1,000円を超えるなど、楽天回復ムードが漂いました。 そんな楽天モバイルの行き先はどこに向かうのか、今回は気になるポイントを整理します。 まず、楽天モバイルにおける契約回線の遷移から見ていきましょう。楽天の2024年度第2四半期の決算発表によると、2023年12月末時点で596万回線(BCP回線除く)であったものが726万回線(同、8月7日時点)に急増しています。つまり、7カ月間で実に130万回線も増加した計算になるのです。 これにはソフトバンクの宮川潤一郎社長が今年8月の同社決算会見で「どこからその純増が湧いてでているのか」と同業他社からも驚きの声が出るほどです。要するに、日本国内の携帯回線契約が飽和状態にある中で、何か「裏」でもあるのではないかとさえ思われるほど急激な伸びを示しているのです。 この契約件数の急増について三木谷社長は、決算会見で、「プラチナバンドスタートによる、通信の質の改善」「安価なワンプランによる、分かりやすい低価格」「ポイント還元などによる、エコシステムの誘引力」を挙げていましたが、本当にその理由が主なものであるのかというと、やや疑問に感じるところではあります。 確かに、2023年12月期以降におけるBtoCの他社からの乗り換え契約(MNP)の純増は29.9万回線あるので、この部分については三木谷社長が指摘するような理由はあるのかもしれません。 しかし、このMNP純増29.9万回線と先の回線増加全体数と間には約100万回線もの乖離があるわけで、この乖離部分が何であるのか気になるところです。