260億円の損失「みんなの銀行」大苦戦は、あまりに必然の結果だ 業界トップコンサルタントが分析!日本人が学ぶべき「重大すぎる教訓」とは?
ローランド・ベルガー、KPMG FASなどでパートナーを務め、経営コンサルタントとして「40年の実績」を有し、「企業のDX支援」を多くてがけている大野隆司氏。 大野氏のところに届く「経営層からの相談内容」が、このところ大きく変化してきているという。「DXの効果が出ない」という悩みが目に見えて増えてきているというのだ。 なぜ、こうした悩みが生じているのか。大野氏が自身の経験や大手・中小企業の現状を交えながら「デジタルを活かした新事業の問題点」について解説する。 【話題の書籍】チーム・組織を強くしたい「すべての現場リーダー」に20年読み継がれてきた必読書
■260億円もの損失を出した「みんなの銀行」 ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)傘下の「みんなの銀行」が正念場を迎えているとの報道をここのところ目にします(「撤退観測も飛ぶ「みんなの銀行」は浮上できるか」)。 「みんなの銀行」は2021年に国内初のデジタルバンク、地銀初のネット銀行として鳴り物入りでスタートし、3年目で単年度黒字化、口座数120万、預金残高2200億円を目標としていました。 ところが2024年3月期の決算では93億円の赤字となり(口座数は96万、預金残高は225億円)、開業からの累積損失は260億円といった惨状を呈しています。
もちろん今後、起死回生の一手で劇的に持ち直すかもしれませんし、銀行を売却することにより、ディールの価格次第ではFFGに益をもたらす「孝行息子」になる可能性もないとはいえません。 しかし設立当初の目標に照らせば、「みんなの銀行」の経営は現状、「失敗」と言って差し支えないはずです。 多くの企業がデジタルを活かして、新規事業の立ち上げや、既存事業の再生を図ろうとしています(以下まとめて「新事業」とします)。
しかしこの「新事業」において、ITリサーチ最大手のガートナー社によれば、成功しているのは「1000件のうち2、3件」とのことです。 今回は、「デジタルを活かした」新事業の検討・推進する場合において、「これをやってしまったら、当然失敗する」というものを、「みんなの銀行」を含めたいくつかのケースを交えて考えていきたいと思います。 ■「ビジネスモデルをコピー」するメリットとリスク たいていの企業で新事業を検討する場合、まずターゲットとする顧客を決め、その顧客へ提供する価値(商品・サービス)を決め、それに続いて、あるいは並行して事業を運営するためのあらゆることの設計を行います。