プロ初Hの阪神藤浪はセットアッパーに本格転向すべきか
一塁走者を警戒し、クイックで2球投げて制球を乱していた藤浪が、次の1球は、少しタメを作るフォームに戻してポンとストライクを取った。 カウント2-2から木下は、アウトコースに投じられた154キロのストレートの球威に押されてセカンドゴロ。併殺に取れた打球だったが、植田―小幡の若い二遊間は一塁に走者を残す。だが、藤浪は動揺することはなかった。 代打の溝脇、この日、3安打の大島と続けてセカンドゴロに打ち取り、無失点でセットアッパーの役目を終えたのである。 少しクビをひねり下を向いてベンチに歩いた藤浪だったが、後ろから野手に声をかけられると白い歯を見せて笑った。8月21日のヤクルト戦で692日ぶりの勝利を手にしたときでさえ見せなかったとびきりの笑顔だった。 試合後、「死ぬほど緊張しました」との広報談話を残したそうだが、高橋遥人の3勝目がかかっていた中継ぎの責任を果たせた安堵感と達成感が笑顔に変わったのか。 矢野監督も、「見ました、見ました。ああいう顔で野球がやれるというのは晋太郎自身も幸せでしょう」と、その笑顔に特別なものを感じ取っていた。 岩貞、馬場、岩崎優という3人の勝利方程式の投手を新型コロナウイルスの影響で登録抹消したチームは、その緊急事態に藤浪を昇格させ、さっそく26日のヤクルト戦から中継ぎ起用した。そのヤクルト戦では1-1の同点の5回から登板させて6回に村上に決勝本塁打を浴び負け投手になったが、矢野監督は翌日にも8-2で迎えた8回に藤浪をマウンドに送っていた。中継ぎ起用3試合目で初ホールド。 矢野監督は、「新しいポジションで投げることに緊張もあると思うが、一個一個こうやって自信をつけて、ファンの皆さんの期待に、そして晋太郎自身が投げたいボールをどんどん投げていけるようにしてもらいたい。今の先発ではない場所というのは学びの場所になると思う。どんどん吸収してどんどんいい投手になってほしい」と言う。