神宮で不運に泣くも抜け球が減り死球はゼロ…なぜ阪神の藤浪は新しい投球スタイルを見せることができたのか?
阪神の藤浪晋太郎(26)が30日、神宮球場で行われたヤクルト戦に今季2度目の先発マウンドに立ち、6回まで1失点に抑えながらも7回味方のエラーに足を引っ張られて失点を重ね670日ぶりの白星を手にすることはできなかった。それでも1四球で制球難に苦しむ藤浪の姿はなく奪三振10で自責は1。新スタイルの藤浪が復活へ“王手”をかけた。
不運な北條の落球に足を引っ張られ
不運としか言いようがない。0-1で迎えた7回二死一、三塁。藤浪の投じたフォークを坂口智隆は叩きつけることしかできなかった。ワンバウンドで打球は藤浪の正面へ。だが、藤浪がつかもうと差し出したグラブと打球のタイミングが合わなかった。グラブをすり抜けた打球は右手の掌から手首のあたりを直撃。ポーンと跳ね返りホームへ向けて転がった。マウンドを駆け下りた藤浪は転倒しながら必死で一塁へ投げるが悪送球になった。痛恨の2失点目である。 打球が直撃した右手をぶるぶると振って痛みをこらえた藤浪は、一度、治療のためにベンチへ下がった。ブルペンでは馬場皐輔が出来上がっていたが、藤浪はすぐに走ってマウンドに戻ってきた。気迫が痛みをかき消したのか。神宮に拍手が起きた。 だが、さらなる不運が待ち受けていた。 二死一、三塁から上田剛史をストレートでねじこみポーンとフライを上げさせた。打球は、ショートの北條史也が背走、センターの近本光司、レフトの陽川尚将も追ってくる“魔の三角地帯”へ。なんと北條はグラブに当てて落球、そのまま近本にぶつかり転倒した。2者が生還。北條は正座したまま唇を噛んだが、藤浪は表情を変えなかった。この回は、先頭の6番・宮本丈をショート正面のごく平凡なゴロに打ち取ったが、これを北條が“お手玉“したことからピンチが広がっていった。 それでもベンチに戻った藤浪は、1イニング2つのエラーを犯した北條の傍に駆け寄り言葉をかけた。試合後も言い訳めいたコメントは一切残していない。 自粛を求められていた会食に参加するという「軽率な行動」から新型コロナウイルスの球界感染者第1号となり、練習に遅刻したことで2軍落ちのペナルティも受けた。数多くの試練が藤浪をひとつ大人にしたのかもしれなかった。 670日ぶりの勝利は手にできなかったが、7回、115球を投げ自責1で10奪三振。何より四球がひとつで死球がゼロという制球の安定度が藤浪の変化を物語っていた。