阪神・藤浪に161球を投げさせた金本采配の是非
雨がふりしきる甲子園に異様な空気が流れた。 8日の阪神ー広島戦。 3点を追う7回二死。阪神の先発、藤浪晋太郎投手(22)の打席に代打が送られなかったのである。 ここまで藤浪は5失点。すでに投球数は131球に達していた。しかも、まだ3点差である。だが、金本監督は走者がいなかったこともあって代打も使わず、8回のマウンドにも藤浪を立たせた。疲労を隠せない藤浪は明らかにボールが浮き、制球は安定していなかった。結局、また二つの四死球が絡み、二死満塁とされた。ここを食い止めれば、まだゲームの行方はわからなかったが、代打・岩本に球威のなくなったボールをジャストミートされ、右中間を破る走者一掃のスリーベース。打たれるべくして打たれた。これで勝負あり。2-8の完敗で、借金は「10」に戻り、8回、13奪三振7安打8失点で161球を投げたエースの今季5敗目と同時にチームの自力Vも消滅してしまった。 試合後、金本監督は「今日は(藤浪を)最後まで投げさせるつもりだった。責任というか、あの立ち上がりがすべてでしょう。何回目かな。ストライクが入らずに(ストライクを)取りにいって打たれた。昨日の青柳のピッチングを見て、さあ、前回のマツダ(スタジアムでの敗戦)のリベンジというところで、あれではねえ。去年14勝したピッチャーがやることじゃないでしょう。そういう意味では、責任を持って、何点取られようが、何球投げようが(最後まで投げさせる)と思っていた。今頃、10勝くらいしていても、おかしくないピッチャー。それくらいの責任は感じて欲しいし、感じないといけない」と、さすがに完投はさせなかったが、藤浪に161球を無理強いした理由を語った。 藤浪は、課題の立ち上がりに2つの四球が絡んで二死満塁を背負うと「転がせばなんとかなるんじゃないか」と考えていたドラフト同期の鈴木誠也に三遊間に153キロのストレートを打たれた。江越が打球の処理に手間取ったことも手伝って2失点。さらに一、三塁から、重盗を仕掛けられ、守備陣も対応できずに3失点目。3回には、二死から田中に甘い変化球をライトスタンドへと運ばれた。3回にも大和のエラーで先頭の丸に出塁させると、一死三塁から松山に犠飛を許して5点目……。 指揮官が藤浪に8回、161球を投げさせたのは、6月2日の楽天戦以来、勝てないエースが同じミスを繰り返すことに対して責任を喚起させるための処置だったのだろう。超変革の金本采配はファンの目やフロントの目を気にしすぎて、どちらかと言うと保守的だった阪神のタブーを打ち破り続けてきた。それらの金本イズムは評価すべきものだが、この日の161球は、怒りに任せての懲罰登板に見えた。 金本監督が、藤浪の今後に期待して試合を預けたとも取れるが、藤浪のためにゲームを捨てたと受け取られても仕方がなかった。雨の中、雨具を着て応援を続けた阪神ファンの目には、どう映ったか。賛否が起きて然るべき采配である。 「理解ができないし、ちょっと考えられないね。おそらく来週は、球宴でゲームがなく登板間隔が空くこともあって藤浪への期待の裏返しで投げさせたのだろうが、どうなのだろう。金本監督は、現役時代に自分がやってきた野球との、あまりの違いに歯がゆさを感じているのだとは思う。それはわかるが、長いシーズンを考えると161球も投げることの悪影響の方が大きいし、首脳陣と藤浪の間にコミュニケーションがあるのか、と心配になる。こういうことをやると、選手がしらけてしまう。ノムさんの監督時代の2年目以降がそうだった。あのときの最悪のチームの雰囲気を思い出してしまう。超変革の名のもと4月にはあった大胆さがまるっきりなくなってしまっているのも心配だ」 元阪神のチーフスコアラーで現在、岡山商科大の特別コーチの三宅博さんは、厳しい意見。ちなみに三宅さんは、現役時代に金本を広島からFAで阪神に獲得する際、「なぜ金本が阪神に必要か?」というオーナーへの説明用のレポートを書いた人物でもある。