日本人が知らないNPBの価値 メジャーの“下位互換”ではない、侍ジャパンと戦った海外選手の言葉
プレミア12閉幕、海外選手が教えてくれた「NPBの魅力」
海外選手にNPBはどう見えているのか、そして憧れる理由とは。野球の国際大会「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」に出場した日本代表「侍ジャパン」は、24日に東京ドームで行われた決勝で台湾に0-4で敗戦。連覇はならなかったが、オープニングラウンドから8勝1敗と高い勝率を誇った。大リーグの40人枠にいる選手が参加できない中で目に付いたのが、NPBというリーグの特徴だ。日本人が気づいていない日本プロ野球の魅力を海外選手に聞いた。(取材、文=THE ANSWER編集部、羽鳥慶太) 【動画】プレミア12で「メジャーリーグ級だ」 米国打者をねじ伏せたNPB右腕の一球 「NPBでやってみたいんだ」「NPBをよく見てるんだよ」 強化試合から全11試合。プレミア12を戦う日本代表とともに、対戦した海外チームの取材を続けた。そこで、何人の選手やスタッフに言われたことだろう。「なぜ、NPBの野球を見ているの?」と逆に聞きながら思ったのは、大リーグの“下位互換”ではなく、このリーグ独自の魅力を感じている選手の多さだった。 事前の強化試合「ラグザス 侍ジャパンシリーズ2024 日本vsチェコ」で来日したチェコ代表のオンジェイ・サトリア投手は、直球が130キロ台。それでも抜けのいいチェンジアップを武器に、昨年春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では大谷翔平投手から空振り三振を奪い、話題となった。「MLBよりもNPBのほうがスタイルが好きなんだ」と日常的に試合動画を見ているという。 なぜかと問えば「スピードだけではない感じがするんだ」。ユニホームを交換したことのある宮城大弥投手が在籍するオリックスの試合をよく見ており、今回対戦した打者もパ・リーグの選手は予備知識があったほどだ。
韓国選手の声で気づき…NPBは“パワーの足りないMLB”ではない
韓国代表のキム・ソヒョン投手(ハンファ)はもっと具体的だった。将来的なNPB挑戦を希望する理由を「MLBは、打球がどれだけ大きく飛ぶかというリーグです。でも、NPBは点数を一点、一点、守備と一緒に動きながら防ぐリーグです。僕は守備の比重が高いほうが好きなんです」と明快に説明してくれた。 NPBをMLBと比較してパワーで劣るリーグと見るのではなく、より1点の攻防を重視した、テクニックが問われるリーグと見る視線は新鮮だった。 指導者もNPBへの関心は強い。チェコ代表のアレックス・ダーハク打撃コーチは今春、沖縄・石垣島で行われたロッテの春季キャンプに派遣され、日本の練習スタイルを学んだ。今回の強化試合では、当時知り合った金子誠コーチや佐藤都志也捕手と話し込む場面があった。やはりNPBには動画を通じて継続的に触れており、佐藤が今季の球宴でMVPに輝いたことまで知っていたほどだ。 キャンプでの学びとは。「日本の練習では、規律や集中力が高いレベルで求められます。でも、それは野球をプレーする上で必要なことなんです。我々はそういうレベルの厳しさに慣れていませんが、日本の選手はそういうシステムで育っています」。プロだけではなく、日本野球の特徴として語られる練習量の多さも、技術を磨くために必要なものと捉えている。 パワーに対し、チーム力や磨き上げた技術で戦おうとするのは、日本代表が歩んできた道のりそのものだ。国際大会がアマチュア主体の時代にはキューバ、プロが参入するようになってからは米国と、体格や身体能力に優れたチームを倒すために先人たちが歩いてきた道だ。 NPBというリーグには、その経験が存分に詰まっている。憧れを語ってくれた各国の選手がこの舞台にやってくることになれば、その魅力はもっと広い世界へ拡散していく。日本が大谷翔平投手(ドジャース)の活躍に熱狂するのと同じだ。この秋、初のチェコ人選手となったマレク・フルプ外野手が巨人に加入したように、より広い世界へ門戸が開くよう願ってやまない。
THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori