渡邊氏「思いもしない何が見つかるんじゃないか」JAXA会見6月29日(全文5完)
23種類のアミノ酸が見つかったことの意義は
あるいは、1粒1粒っていうのがすごく多様で、それがリュウグウサンプルの魅力なんですね。つまり1個1個の粒を見ていくと、それぞれ歴史が分かって、それを全部総合することによって初めて全体像が見えてくるっていう構造になっていると思う。だからどうしても先行して分析された粒子に引きずられた結果がまずは最初に出てくる。それは仕方ないんですね。でも今後そういう、本当に個性豊かなそれぞれが語っている言葉に耳を傾けていくと、そこで本当の太陽系ができたときの秘密、われわれが思いもしなかった何かっていうものが見つけられるんじゃないか。サイエンティストの私としては、そういう部分にこれから大いに期待しています。 Science Portal:分かりました。あと、これからまだサイエンスの成果が続くと思いますが、今月、公になった成果として、まだ、例えば23種類のアミノ酸という話もあったかと思うんですが、この話は今日はあまりなかったんですけど、これについての意義のご認識とかもこの機会ですので伺えればと思います。 渡邊:先ほど説明したように、われわれは専門家集団が1個1個、石であるとか砂であるとか、有機物でも溶けやすいもの、溶けにくいものって分けながら分析するという初期分析チームと、それらを総合してリュウグウの粒子が全体としてどういうことを語っているのかというのを調べるフェーズ2キュレーションというのを並行して進めていったんですね。で、今回紹介されたのは、そのフェーズ2キュレーションの岡山大学のほうの成果で、総合的に見ているので、当然、有機物、アミノ酸も含めて、いろいろなデータが出てきています。
さらに深く調べた結果が出てくると思う
ただ、一方で初期分析のチームは、本当にその有機物の専門家、可溶性有機物でアミノ酸とかそういったことについて徹底的に調べるグループがありますので、そういった成果もこれから出てくると思うんですね。 そういう意味で、少し報道はアミノ酸ということに集中し過ぎて、確かに興味深いっていうのはよく分かるんですが、そういった成果をぜひもう少し待っていただくと、さらにそれを深く調べた結果が出てくると思いますので、ぜひそういったことが一通り明らかになった段階でもう一度、記者説明会でたっぷりと話させていただけたらいいなと思っています。 Science Portal:ありがとうございます。あともう1つだけ。これは工学的なことで津田先生に伺えればと思いますけど、こういった科学のいろんな成果が少しずつ上がっていくにつけ、探査の妥当性というか、いろんな手法、いろんな技を使って成し遂げてきましたけども、その妥当性とか的確性みたいなものの検証にもつながって、科学の成果が上がってくるということはそういうことの検証にもなっていると思うんですが、そういったところからどういうふうに昨今の科学の成果が出始めているところをご覧になっているかというのを伺えればと思うんですが。 津田:いや、まさにそのとおりですね。われわれ、工学メンバーって、技術者としては、探査機をそのとおり運用したっていうのは比較的リアルタイムに近い形で分かるので、それで成果が出たと言ってもいいわけなんですけども、やっぱりそれはなんのためにやってたかっていうと科学的な成果を得るためですよね、情報を得るためです。で、やっぱり楽しいんですよね。工学メンバーとして、われわれ、探査機をそういうふうにつくりましたけど、それを使って、もうめちゃくちゃ喜んでなんかやってくれる方々がたくさんいる。で、こんなのできたよって、われわれに自慢してくれるんですね。それはすごく楽しくて。で、今そういうフェーズに来ているんで、一時期の苦しかった開発のときとか運用のときとかに比べると楽しくマネジメントさせていただいている状態です。 で、このフィードバックが本当はもっと頻度よくかかると、もっとすごい成果を上げられるんだろうなというふうには思いますね。だから「はやぶさ」1号機が帰ってきてから4年たって「はやぶさ2」がやっと打ち上がって、だけどあれと同じことはもう5年か10年早くできたと思うんですね。