冬に出やすいうつ症状 「気持ちの落ち込み」「抑うつ」「体のだるさ」…予防につなげるために食べておきたいもの
食事で取る栄養は、心の健康維持にも影響を及ぼします。寒い時期は、冬季うつ病(季節性感情障害)など、メンタルの不調を招きやすいと言われています。予防のために、どのようなものを食べるとよいのか、国立病院機構東京病院(東京都清瀬市)の栄養管理室長、阿部裕二さんに尋ねました。(聞き手・利根川昌紀) 【図表】うつを予防するために摂取しておきたい主な栄養素と食材
カギを握るセロトニン
――食事によって、心の状態を改善できるのはなぜですか。 食事によって摂取する栄養素は、神経伝達物質を作るのに関わっていると言われています。心の健康という観点で言うと、カギを握るのは心を安定させる「セロトニン」です。これの原料になるのは、「トリプトファン」という必須アミノ酸ですが、体内で作ることができません。そのため、食事で摂取する必要があります。 ――トリプトファンはどのような食材に含まれていますか。 肉や魚、大豆製品、牛乳・乳製品、バナナなどに含まれています。気持ちが落ち込んだり、抑うつ状態になったりしやすい冬は、トリプトファンを多く含む食材を意識して取ることをお勧めします。 ――トリプトファンさえ、取っておけば大丈夫ですか。 それでは必ずしも十分とは言えません。トリプトファンからセロトニンを作るためには、ビタミンB6が必要です。赤身の肉や鶏肉、魚、ブロッコリー、バナナ、納豆などには、ビタミンB6が比較的多く含まれています。加えて、トリプトファンが脳内に取り込まれる際には炭水化物が使われます。主食を抜かずに取ることも大切です。
鍋料理はお勧め
――ほかに摂取すべき栄養素はありますか 。 ビタミンDは摂取しておきたいです。血液中のビタミンDが少ない人は、うつ症状がある割合が高いという報告があります。ビタミンDは、太陽の光を浴びることで体内でも作られますが、冬は日照時間が短く、食事から摂取しておきたいです。 ビタミンDは、キノコ類や魚などに含まれています。 また、鉄や亜鉛、魚に含まれるオメガ3系の脂肪酸「DHA」や「EPA」が不足しないようにすることも、うつ病の予防につながります。 ――食事の仕方でポイントはありますか。 栄養素によっては加熱など、調理法によって損失してしまうこともありますが、できるだけトリプトファンなどが含まれる食材を摂取するよう心がけてほしいです。 お勧めは鍋料理です。調理も簡単で、いろいろな食材を一度に取ることができます。 また、朝食を欠かさず取ることも大切です。うつ病になったことがあるという人は、そうでない人と比べて、朝食を毎日食べることが少なかったという調査報告もあります。