インフルエンザ 新タイプの「経鼻ワクチン」 注射との違いと注意点は?…さらに新しいタイプも登場予定
この冬もインフルエンザの流行期に入りました。予防のためのワクチンに、2024年から鼻腔(びくう)に噴霧する「経鼻ワクチン」が登場しました。接種時に痛みがないのが特長ですが、注意点もあります。(東礼奈) 【グラフ】インフルエンザ感染者の推移
インフルエンザは、ウイルスに感染することで発熱や頭痛、全身の倦怠(けんたい)感、せきなどの症状が表れます。毎年冬を中心に流行し、今シーズンも24年11月上旬に厚生労働省が流行入りを発表しました。ウイルスには複数の型があり、流行する型がシーズンごとに変わります。
2~18歳が対象
重症化予防のため、注射型のワクチンが使われてきました。感染力を失わせたウイルスの成分を使う「不活化ワクチン」で、例年春頃に国が次のシーズンに流行する型を予測し、メーカーが製造します。 今シーズンは4種類のウイルスに対応できるワクチンが作られています。生後6か月以上が対象で、13歳未満は2回、13歳以上は1回の接種が基本です。 65歳以上の高齢者や60~64歳で重い持病がある人は、定期接種の対象で、接種費用に公費助成があります。自治体によっては、それ以外の人も助成を受けられる場合があります。 新たに供給が始まった「経鼻ワクチン」は2~18歳が対象で左右の鼻腔に1回ずつスプレーします。病原性を弱めたウイルスを使う「弱毒生ワクチン」で、世界の流行状況から世界保健機関(WHO)が推奨する3種類のウイルスに対応して作られています。国内での臨床試験で、接種したグループは、接種しなかったグループと比べて発症リスクを28・8%減らせました。効果は注射型と同程度とされます。
効果長く続く期待
いずれのワクチンも血液中にウイルスを攻撃する抗体が作られます。経鼻ではさらに、鼻や喉の粘膜の上にも抗体ができます。感染を抑える効果が長く続くことが期待されます。 ただし、まれにワクチン由来のインフルエンザを発症する恐れがあります。このため、重症化リスクのある免疫不全や免疫を抑える治療を受けている人、胎児への影響が心配される妊婦は接種できません。 さいたま市の峯小児科で12月上旬に経鼻ワクチンの接種を受けた同市の菊地真那夢(まなむ)ちゃん(5)は「少し怖かったけど痛くなかった」と話しました。インフルエンザワクチンの接種予約のうち経鼻の希望は10人に1人の割合で、院長の峯真人さんは「経鼻を希望する人には丁寧に説明し、接触する家族に妊婦や免疫力が落ちている人がいれば注射型を勧めます」と話します。 厚労省によると、今シーズンのワクチン供給量は、注射型2604万本、経鼻130万本の見込みです。 さらに新しいタイプのワクチンも登場します。高齢者向けに有効成分の量を増やした高用量の注射型ワクチンの製造販売が24年12月に承認されました。また、経鼻の不活化ワクチンも、メーカーが24年3月、国に製造販売の承認を申請しています。 ワクチンに詳しい北里大名誉教授の中山哲夫さんは「感染すれば子どもは脳症、高齢者は肺炎の合併症を起こすリスクがあります。メリット、デメリットを考えてワクチン接種を検討してください」と話しています。