「山にでも捨ててくれ」と飼い主に言われた特養の愛犬「ルイ」 天国へ…体調悪化から3年 命の力強さ教わる
ペットと暮らせる特養から 若山三千彦
かわいがってきた犬や猫と最期まで一緒に暮らしたい――。そんな願いをかなえてくれる全国的にも珍しい特別養護老人ホームが、神奈川県横須賀市の「さくらの里山科」。そこで起きた人とペットの心温まるエピソードを、施設長の若山三千彦さんがつづります。 【写真6枚】命のすばらしさを教えてくれたルイ
ペットと暮らせる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」で暮らす保護犬出身のルイ(ミックス犬、雄)が昨年12月、虹の橋に旅立ちました。“享年”17歳(推定)でした。 ルイは元々、高齢の飼い主さんに捨てられた子でした。飼い主さんが老人ホームに入る際に置いていかれてしまったのです。ケアマネジャー(介護支援専門員)が、ルイをどうするか、その飼い主さんに尋ねたところ、「山にでも捨ててくれ」という答えが返ってきたそうです。
ルイはその時推定6~7歳。ですので、飼い主さんは、6年近くルイと一緒に暮らしていたと思われるのに、「山に捨ててくれ」と言い放つなんて……。ルイはとても人懐っこいので、かわいがられてはいたのだろうと思います。でも、この飼い主さんは、都合の良い時はかわいがっても、真の愛情は持ち合わせていなかったのでしょうね。 もちろん、老人ホームに愛犬を一緒に連れていくことは、ほぼ不可能であることは私がよく知っています。多くの高齢者が、泣く泣く愛犬を手放していることもよく知っています。しかし、愛情のかけらもなく「山に捨ててくれ」と言い放つのは、ちょっと違いますよね。年齢を問わず、このような人にはペットを飼ってほしくないものです。 ところで、この高齢の飼い主さんにはケアマネジャーがいたのに、ルイの正確な年齢がなぜ分からないのか疑問に思われるかもしれません。実は、高齢の飼い主さんが、愛犬や愛猫の年齢を正確に把握していないのはよくあることなのです。「さくらの里山科」に愛犬、愛猫と同伴入居した高齢者にも、ペットの正確な年齢が分からない、年齢を間違っていた、というようなことは多々あります。ですので、ルイの正確な年齢が分からないことは、ルイへの愛情の有無とは関係ありません。 そして、ルイにとって幸いだったのは、このケアマネジャーが、「さくらの里山科」と同じ法人の在宅介護部門の職員だったことです。私に相談してくれたので、ルイにはさほど長い時間一人ぼっちで寂しい思いをさせずに、「さくらの里山科」で引き取ることができました。 ただし、うちの法人ではないケアマネジャーや一般の方から同様の相談を受けた場合、大変申しわけありませんが、犬、猫を引き取ることはしていません。ホームで暮らせる犬、猫の数には限りがありますので、ご理解ください。