第163回芥川賞受賞会見(全文)高山羽根子さん「もうちょっと書かせていただける」
首里という場所を選んだのは
読売新聞:読売新聞の鵜飼といいます。おめでとうございます。 高山:ありがとうございます。 読売新聞:まさに今、沖縄の話、出ましたけれども、アーカイブというか、歴史をどう残すのかという中で、読みながら、琉球馬のこととかソテツ地獄のこととか、私自身もあまり知らないことというか、この小説を読みながら、いろいろ自分の中にある、沖縄っていうと、どうしても戦争のイメージばっかりありますけども、そこから埋もれてるものがいろいろ出てきて、読みながら自分自身いろんな発見もあった感じはしたんですけど、なぜ高山さんは今回、いろんな場所を今まで舞台にされてきてますけども、今回は沖縄っていう場所、そして首里、その中でもそこに首里という場所を選ばれたのか、お伺いできればと思います。 高山:ここ数年で何回か沖縄に行かせていただくことがありまして、やっぱり今まで書くもの全部、取材っていう言い方だとちょっとあれなんですけど、その場に行かないと書けないような人間なものですから、それを、行かせていただいたことのご縁も含めて、地元の資料館ですとか、そこに行って歩くこととか、そういうことも含めて文章にしていくことが今までもずっと多かったので、そういった形でさせていただいた、創作させていただいたっていう形になります。 読売新聞:その中で特に、沖縄っていうのを今回書いてみようと思われた理由についてはどんな感じでしたか。歩いた感じの印象が強かったとか。 高山:そうですね。これはでも本当に、先に、行ったことがあって、行った経験が先にあって、それから生まれた形になります。書こうと思って行ったのではなくて、行かせていただいた縁というか、旅行なりなんなりで行かせていただいた経験みたいなのがあって、そこから生まれたっていう形ですね。
ウマには乗るのか
読売新聞:ウマに乗るシーンがあるんですけども、高山さんはウマには。 高山:なかなか。もともとちょっと大きい動物が得意ではないというか、だったので、あまり、動物見るのは好きですし、すごく動物園とかも好きなんですけど、人よりも大きい動物っていうのがやっぱりちょっと。しかも人間の手に、たぶんすごくずっと長く使役されている動物ですので、能力はすごく高いと思うんですけど、怖さはわりとあるので、その怖さみたいなのも含めて動物を書くときは、人間以外の生き物を書くときは、そういう怖さみたいなのも含めて書きたいなっていう気持ちがありました。 今までの中で一番たぶん大きなというか、イヌとかネコとか、そういったものは書いてたことがあるし、ちょっと小さい虫とか、そういったものはあるんですけど、たぶん一番手に余る大きさのもの、生き物との、女性というか、人間の中でもそれほど大きくない人とのやりとりみたいなものを書きたいなというのはありました。 読売新聞:ありがとうございます。 高山:はい、ありがとうございます。 司会:ありがとうございます。ほかにどなたか。じゃあ、まず、すいません、マイクのほうにお願いします。 男性:質問者がこちらなので難しいと思うんですけど、正面向きでできれば。 高山:はい。すいません。 司会:いえいえ。 高山:向かって話しちゃう。 司会:前に向かって。 高山:すいません。