芥川賞の遠野遥さん、2作目での受賞に「頭が追いついていない」淡々と驚く
第163回芥川賞は、高山羽根子(たかやま・はねこ)さんの「首里の馬」と遠野遥(とおの・はるか)さんの「破局」の2作の受賞が決まった。東京都内のホテルで15日夕に開かれた記者会見で、遠野さんは「先ほどお電話をいただいたばかりなので、非常にまだ驚いたまんまで緊張して頭が追いついていない状況。変なことを答えたらご了承を」と初々しさを見せた。作家・津島佑子さんの娘で太宰治の孫である石原燃さんの「赤い砂を蹴る」は受賞を逃した。 【動画】第163回 芥川賞に高山羽根子さんと遠野遥さん、直木賞に馳星周さん
印象的な文体「自然に書いたらこうなった」
遠野さんは1991年生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、2019年のデビュー作「改良」で第56回文藝賞を受賞した。2人の女性の間を行き来する男子大学生のキャンパスライフを描く受賞作の「破局」は2作目。芥川賞は初ノミネートでの受賞となった。 選考結果は、受賞作を出版した河出書房新社でドラマを観ながら待っていた。受賞の連絡を受けて、「(第56回文藝賞を)同時受賞した宇佐美(りん)さんには『取りました』とLINEしました。(家族には?)そう言われればしてない」と緊張気味に話した。 ノミネートが発表された時よりも、受賞が決まったときの方が驚きは強かったと遠野さん。「自分でも、これがみんなに好かれるようになものになるとは思ってなかったので、歴史ある賞をいただけたのは意外でしたね」と語る。うれしさはあるかとの問いには、「ノミネートされると結果が出るまで結構ソワソワしてしまう。それをもう経験しなくていいのはうれしい」と淡々と語った。 本作については文体が印象的との指摘もあるが、「いろんな人からそう言われますが、そんなに変わったことをやろうとは思ってなくて、自然に書いたらこうなりました。引き続きこんな感じでいければと思います」。 小説は、お金のかからない趣味として書き始めた。芥川賞の受賞で小説を書くことの位置づけは変わるかとの質問にも「特に受賞したからといって執筆に対する思いが変わることはない。まだ2作しか書いていないので、3作目を早く出したいと思っています」と語った。 (取材・文:具志堅浩二)