夫夫(ふうふ)として生きていきたい―― 親にカミングアウトしたゲイカップル、結婚式を挙げるまで
親に対して、自分がゲイであることを告白する――。 ともに看護師である五十嵐隼人さんと菅野貴文さんは、周囲に祝福されながら結婚式を挙げたいと願い、それまで避けていた現実と向き合うことにした。カミングアウトをしなくても、カップルとして一緒に生きていくことはできる。しかし、友達だけでなく親にもゲイであることをオープンにすることによって「これまで想像すらしなかった幸せを手に入れた」という二人を紹介する。(取材・文・写真:NHK「超多様性トークショー!なれそめ」取材班/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
カミングアウトができる!? 初めて出会った選択肢
1988年生まれの五十嵐隼人さんは、子ども時代に父親から「たくましく生きろ」という言葉をかけられて育った。それでも、小学生のころから好きになるのは、いつも男の子。友人たちに「そんなのおかしいよ」と言われて以来、「自分は周りの友だちとは違う」「人を好きになった気持ちを伝えてはいけないんだ」という思いを抱えながら生きてきた。看護学科のある高校を卒業した隼人さんは、就職して小児科の看護師になる。だが、自分がゲイであることを周囲に明かすことはなかった。
「きっと、このまま一生独りで生きていくんだろうな」。そう感じていた隼人さんは、同じゲイの看護師の友だちがほしいと考え、ゲイの出会い系アプリに登録。それをきっかけに出会ったのが、精神科の訪問看護師で同じ年の菅野貴文さんだった。隼人さんは会ったときの貴文さんの印象について、口数が少なく、まともに目も合わせてくれなかったと振り返る。しかし、ゲイ同士でよく話題になるという「カミングアウト」に話が及ぶと、大きく印象が変わった。貴文さんは「友人にはカミングアウトしている」というのだ。 隼人「カミングアウトしている人って、すごく派手というイメージがあったから、『こんな普通っぽい人がカミングアウトできるんだ! この人、何?』とすごく衝撃を受けました」 この出会いは、隼人さんの人生の大きなターニングポイントになった。ゲイであることをオープンにして生きていくという選択肢を、初めて意識することになったからだ。