夫夫(ふうふ)として生きていきたい―― 親にカミングアウトしたゲイカップル、結婚式を挙げるまで
貴文さんも母親にカミングアウト そのとき母は優しく包み込んだ
そんなある日、貴文さんに、ある依頼が舞い込んでくる。それは「テレビ番組の中で、里帰りしてカミングアウトしませんか?」というものだった。自分たちがテレビに出ることで、同じような状況に置かれた人たちを勇気づけられるかもしれない。そう考えた2人は、悩みながらも出演を受諾。
テレビの取材班と共に、貴文さんは、結婚したい相手が男性であることを母親に告げるために、里帰りした。すでに友人たちにはカミングアウトして、「雲が晴れるような感じで、すごく気持ちが楽になった」と感じていた貴文さんだが、それでも自分を産んでくれた母親に打ち明けるのは、改めて覚悟が必要なことだった。 そして貴文さんのカミングアウトを聞いた母親は、少し戸惑いつつも、ゲイであることに苦悩し続けてきた息子を優しく包み込む。 「貴文は貴文だから、何も変わらない。バカだね。悩む前に言いなさいよ」 また、結婚相手として紹介された隼人さんに対しては「つらいことが起きても、くじけないで。しんどくなったら、頑張らずに逃げて」と声をかけた。そして、 「反対しているお母さんが普通だと思う。隼人くんのことを思って反対していると思うから。がんばれ!」と――。 カメラがとらえたその会話は、3か月後に番組として放送された。それを見た隼人さんの母親は、3か月間、自分が悩んできた日々の「答え」が明確になる。 「私が産んだ子なのに、私が守らなかったら誰が守るのか。息子の人生なのだから、他人に遠慮をしないで、堂々と生きてもらえばいいではないか。これから大変なことがあるかもしれないけれど、全力で2人を応援していこう――。」それを、すぐに隼人さんに伝えた。
隼人「放送が終わった直後ぐらいに電話がかかってきて、『お母さん、放送見ました。あんたたちのこと、これから応援するから頑張るんだよ』みたいに言われて。『傷ついた心を返してよ!』と思ったんですけれど(笑)。まあ、今は仲よくやっているんですけどね」