W杯アジア最終予選で日本が入ったB組は韓国のA組に比べて「天国グループ」なのか…豪州、サウジアラビアに不気味な中国
そこへポット4の中国、ポット6のベトナムと勢いのある両国が加わった。中国との対戦成績は13勝7分け7敗で、1998年3月の黒星を最後に6勝5分けと負けていない。直近では森保監督のもとで臨んだ2019年12月のEAFF E-1選手権(釜山)で勝利しているが、当時とはまったく別のチームになった。 国内リーグの広州恒大に所属するFWエウケソンらブラジル出身のアタッカートリオに加えて、イングランドで世代別代表に選出されたDFティアス・ブラウニング、MFニコ・イェナリスらの国籍変更選手を次々と招集。5月以降の2次予選を4連勝で締め、一気に勝ち点を伸ばして最終予選進出を決めた軌跡は再調査する必要がある。 加えて、中国との対戦では新型コロナウイルス感染の拡大も影響を及ぼしてくる。来年2月の北京冬季五輪をみすえて、中国国内におけるすべての競技の国際試合が禁止されたという情報もあるなかで、9月7日のアウェイ戦開催が不透明になりつつある。 第三国での開催か、あるいは来年1月27日のホーム戦と日程を入れ替えるのか。JFAの反町康治技術委員長も、起こりうる状況に迅速に対処したいと後方支援を約束した。 3戦3勝のベトナムには、アジアカップ準々決勝で大苦戦を味わわされた。育成年代から成長してきた選手たちが、国民の熱狂的な後押しを受けて躍動する好循環のなかで迎える、同国史上初のアジア最終予選という点も加味して戦うと森保監督も力を込める。 「局面局面における激しさや厳しさだけでなく、最後までハードワークも惜しまない。なので相手よりもハードワークして、走って戦う気持ちを持って挑まないといけない」 11月11日にベトナム、16日にはオマーンとアウェイ戦を戦い、年が明けると中国戦に続いて2月1日にサウジアラビアとホームで対戦。3月24日のオーストラリアとのアウェイ戦をへて、ホームにベトナムを迎える同29日で全日程を終える。 韓国メディアに悲鳴を上げさせた中東包囲網は回避できたが、一筋縄ではいかない相手がそろった。ピッチ外においても、3月や6月と同様の新型コロナウイルス感染に対する防疫措置が取られる場合は、たとえばオマーンとの初戦に出場するためには8月30日までに帰国し、翌朝から3日連続で受けるPCR検査で陰性が証明されなければならない。 ヨーロッパ組を期日までに帰国させるためには、状況によってはチャーター便の手配も必要になってくる。アウェイ各国の防疫体制の調査だけでなく、アジアサッカー連盟がセントラル開催を提案した場合には、すぐに立候補できる準備も求められる。 東京五輪世代を融合させていくチームの強化や対戦相手の分析を含めて、どれかが疎かになればリズムを狂わせ、たちまち「死のグループ」に巻き込まれる。現役時代に「ドーハの悲劇」を経験しているからこそ、森保監督はいっさいの油断を見せない。 「結果が求められる非常に厳しい試合が続いていくが、レベルの高い戦い、夢をかけた戦いに臨めることがこの上ないやりがいだと思う。全力を尽くしていきたい」 カタールの地でのベスト8以上を目指す目標に変わりはない。しかし、だからといって足元を、アジアでの最後の戦いを疎かにするつもりも毛頭ない。森保監督は気を引き締めながら、まずは目前に迫る東京五輪の戦いにすべてを集中させていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)