2年白星なしも「通用するボールあり」…日ハムから西武移籍の左腕・吉川光夫は新天地で再生しV奪回切り札となれるか?
ただ、この2年の吉川は、結果を残せていない。 日本ハムがリーグ優勝した2012年に14勝5敗、防御率1.71でMVPと最優秀防御率の二冠を手にした吉川だが、その後に二桁勝利をあげたのは11勝(8敗)をあげた2015年だけ。巨人時代の2018年8月15日のヤクルト戦を最後に、2年以上白星から遠ざかっている。 今シーズンの登板はわずか5試合で先発はゼロ。大差をつけられた試合終盤での登板が多く、0-6で迎えた8回からの2イニングを被安打3、失点2で終えた7月4日のソフトバンク戦を最後に一軍のマウンドに立っていない。もっとも、胸中には忸怩たる思いを募らせていたのか。体調に関して「まったく問題なくプレーできている」と語った吉川は、自らの課題をすでに設定している。 「ストレートのバランスがいい年と悪い年があると自分自身でも思っているので、ストレートのバランスをしっかりと整えて、(ピッチングの)軸として投げられるようにしたい。(体調は)いまの状態を維持しつつ、もうちょっと走り込むとか鍛えたりして、けがなくキャンプを迎えられるようにしたい」 注目される役割は長いイニングを託す先発となるのか、あるいは右腕で形成された磐石の中継ぎ陣に貴重な存在として組み込まれるのか。 渡辺GMは「先発も視野に入れたなかで、現場が決めることだと思っています」と来シーズンで15年目を迎える吉川へ期待を込めた。 「若いころは私が監督をやっているときに何回も対戦していますし、すごく手強いピッチャーでした。ここ数年は中継ぎもやって、なかなか結果も出ていなかったところもあるので、これを現場がどう考えるか。ボールの力もそうですし、経験値もありますし、ウチの手薄な部分を補強したというところで、彼にとってもすごくチャンスが多いチームだと思います。自信をもっていってほしい」
背番号は今シーズン限りで現役を引退した高橋朋己氏が支配下登録時代に背負い、育成選手として再契約した後に空き番となっていた「43」に決まった。 同じ1988年に生まれた左腕で、2014年と2015年には守護神として大活躍した高橋氏の思いを背負うように「前任の高橋君の番号なので、負けないように頑張りたい」と静かに語った。 吉川にとっては、強力打線を擁する西武の「チーム力」という味方もある。 「すごく打つこともそうですし、二遊間がしっかり守れることでも、すごくいいチームだと思っています。たくさん援護してもらえると思うので、そのなかでしっかりと相手バッターと勝負していける。どこで投げるとはまだ言われていませんけど、(先発と中継ぎの)どちらでも準備をして、チームに求められるところでしっかりと結果を残していきたい」 2年連続で巨人をスイープし、日本シリーズを制したソフトバンクの圧倒的な強さが際立った今シーズン。レギュラーシーズンで10勝13敗1分けと西武が負け越している最強軍団を乗り越えない限りはパ・リーグの覇権も、2008年を最後に遠ざかっている日本一も手にできない。 「去年まで(パ・リーグを)2連覇しているチームですし、ソフトバンクに立ち向かっていけるチームだと思っているので、その一員としてしっかり頑張りたい」 田中将大や前田健太、坂本勇人らと同じ1988年生まれ世代。吉川は、渡辺GMや辻発彦監督をはじめとする首脳陣から託される大きな期待を、復活を遂げるためのエネルギーに変えたいと、内なる闘志を抱いている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)