SB工藤監督がムーアの7回ノーノー交代に公開謝罪…13年前の落合中日に比べて采配に賛否が起きない理由とは?
日本シリーズの第3戦が24日、福岡のPayPayドームで行われソフトバンクが巨人を4-0で下して3連勝、4年連続の日本一に王手をかけた。先発のムーアが7回までノーヒットノーラン。日本シリーズ史上初の大記録への期待が高まったが、工藤公康監督は交代を決断して勝利の方程式につないだ。クローザーの森唯斗が9回二死から丸にセンター前ヒットを許して“ノーノーリレー”を逃したが、ムーアの交代についてネット上で賛否議論が炎上することはなかった。2007年の中日と日ハムのシリーズ第5戦では中日の落合博満監督が8回まで完全試合を続けてきた山井大介を交代させて岩瀬仁紀につないだ非情采配に対しては賛否が論じられたが…この違いはどこにあるのだろう。
非情采配理由は「どうしても勝ちたかった」
7回を投げ切りベンチの奥に座るムーアのもとに工藤監督が近づいた。ノーノーの大記録まで残りアウト6つ。おそらく意志の確認だろう。日本シリーズでのノーヒットノーランは過去に誰一人として成し遂げていない。球史に名を残す大記録が続行されていたが、ムーアは納得したかのようにジャンパーを着て2アウトになっても肩慣らしを始めることはなかった。工藤監督が交代をムーア自身に告げてから中村、グラシアルのタイムリーが出て2点差が4点差に開いた。それでも工藤監督の決断は変わらなかった。 「少し疲れも見えてきたというところもあった。今日はどうしても勝ちたかった。このPayPayドームで負けるわけにはいかないという思いもあった」 試合後に工藤監督は非情の継投理由をこう説明した。 球数は93球。ストレートも7回の時点で、まだ153キロをマークしていたが、工藤監督は、ナックルカーブやチェンジアップのキレに疲れを感じ取っていた。 ムーアは今季13試合を投げて完投は1試合もない。最多の球数も119球。左足のふくらはぎを痛めて7月から約2か月戦列を離れていた時期もある。しかも、この日は、立ち上がりからストレートの最速が154キロをマークするなどハイペースで飛ばしていた。 モイネロ、森の必勝パターンへのリレーを決断した工藤監督の采配に大記録をあきらめることになったムーア自身も異論はなかったのだろう。 「自分の投球内容よりチームが勝つという事が一番大切なこと」 ゲーム中にそう談話を回したムーアは、試合後、「(ノーヒットノーランは)知っていた。でも2点差のクロスゲームだった。あまり(記録を)考えないようにしてストライクを先行させ、ひとりひとりに集中して投げたんだ」と笑顔で答えた。