「もうひとつの民主主義」が生まれる条件とは? 「市民型民主主義」と「人民型民主主義」を比較する
「ユーラシアの帯」の中心と周縁
僕はこれまで、建築様式の分布から「ユーラシアの帯」という一種の歴史観をもってものを書いてきた。ある程度発達した建築様式(主として宗教建築の様式)は、世界の中の限られた地域、すなわちユーラシア大陸の西から東へと横たわる帯状の地域に分布する(16世紀以後にヨーロッパ人が拡大した様式と近代様式を除く)。この帯には、いくつかの歴史的中心があるが、西の中心は地中海周辺で、東の中心は中国の中原であり、ペルシャ、インドなどはその中間部の中心である。そしてそのユーラシアの帯における位置、特にその「中心性と周縁性」によって国家と民族の性格と発達が左右されると考えたのだ(梅棹忠夫の「文明の生態史観」という概念と重なるところもある)。 西欧(アルプス以北の)、北米、日本などは「ユーラシアの帯」の周縁部の国家であり、ロシア、インド、イラン(ペルシャ)、中国などは中心部の国家である。海洋型とした国家はほぼ「ユーラシアの帯の周縁部」であり、内陸型とした国家はほぼ「ユーラシアの帯の中心部」である。地中海周辺は古代には海洋型であったが、次第に内陸型に転ずる。海の文明エネルギーが地中海から、大西洋、そして太平洋へと移動するのだ。総合していえば、A型は海洋型周縁部の国であり、B型は内陸型中心部の国である。 中心部の国家は、常にその周縁としての外部からの侵略を受け、その集団形式を崩される恐れがあるので、内部を強力に統制すると同時に、周縁を圧迫することによって国家を「統制的」に安定させ発展させる傾向がある。周縁部の国家は、統制することより分業によって個人あるいは小集団の能力を発揮させることを重視し、中心部の国家に対して「交換的」に働きかけて利益を蓄積し国力を増強させる傾向にある。 人間の性格が、それまでの人生経験と、特に他者との関係によって左右されるように、国家や民族の集団形成原理も、歴史的、地理的条件によって左右されると思われるのだ。