少子化対策と温暖化対策の裏にある不都合な真実 本当に「異次元」なのは?
岸田文雄首相が年頭の記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明しました。2022年の出生数は1899年の調査開始以来、初めて80万人を割り込み77万人台となる見通しで、「待ったなしの課題」と位置づけています。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、少子化問題について「地球の上に人間が溢れ出しているときに、それぞれの国が人間を増やそうと躍起になるのは、果たして正義だろうか」と問いかけます。若山氏が独自の視点で語ります。
「異次元=あの世」の人口を増やす?
数学的にいえば、線は1次元、面は2次元、立体は3次元ということで、われわれは3次元の世界に生きているのであるが、時間を加えれば4次元となる。理論的(数学的)にはさらに多次元の世界(空間)も想定できる。 次元が異なるということは、他の世界に影響を与えない、すなわち「無縁」の関係であり、海の向こうの世界より、太陽系より、銀河系より、さらに遠い世界、「この世」ではなく「あの世」を意味するといっても差し支えない。 岸田政権は「異次元の少子化対策」を実現するという。 「あの世」の人口を増やすのか、という冗談はさておき、政策自体は悪い話ではない。子育ての社会的支援は必要だと思われる。今の野党が与党時代に進めようとした政策でもあり正面切っては反対しにくい。しかしこと財源となると、選挙を気にしてか、与野党を問わず増税反対の声が出て、結局さらに財政赤字が積み上がる。 またGX(グリーン・トランスフォーメーション)と呼ばれる「温暖化対策」は菅政権以来の大きな政策の柱であるが、少子化対策にしろ、温暖化対策にしろ、また防衛力強化にしろ、財源や増税の話になると政治家の姿勢がふらつく。国民が何らかのグループをつくって自分たちの利益になる政策を要求するのは当たり前だが、どのような政策にしろ財源の裏づけを考えるのがプロの政治家というものではないか。三角大福中(三木、田中、大平、福田、中曽根)の時代まではそうであった。しかし今の政治家は、財源も考えずに国民の要求のお先棒を担いで人気稼ぎ。まさにポピュリズムである。 そういったことを頭に入れて考えると、一見いいことのように思える少子化対策と温暖化対策の裏にある不都合な真実が気になってくる。大きな視野から工学的な論理で整理したい。