新しい戦前・新しい中世・新しい江戸 時代のポイントを鋭くついたタモリ発言 歴史は繰り返すのか
政府は昨年12月、今後5年間の防衛費を計43兆円とする防衛力整備計画を閣議決定しました。こうした状況を受けてのものかどうかはわかりませんが、タレントのタモリが発言した「新しい戦前」という言葉も話題になっています。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏はこの発言について「鋭く、時代のポイントをついていた」と評価し、「『新しい戦前』が『本当の戦前』にならないようにコントロールすること」が大切だと指摘します。若山氏が独自の視点で語ります。
タモリの発言「新しい戦前」が話題に
昨年末に放送されたテレビ番組「徹子の部屋」(テレビ朝日系)にゲスト出演したタモリが、2023年について問われ「新しい戦前になるんじゃないですかね」と発言したことがネットで話題になっている。 タモリ本人が詳しく説明したわけではないが、この国が戦後の平和主義から一転して、戦前の軍国主義に似た状況になりつつあることを危惧したものと受け止められたようだ。 たしかに現在、国外では、ロシアのウクライナ侵攻、台湾や情報技術をめぐる米中間の緊張の高まり、国内では、防衛費の急増、反撃(敵基地攻撃)能力の整備など、戦争の匂いがこの国の内外に満ち満ちてきた。 これから日本は、ロシアなどを抜いて、アメリカ、中国に次ぐ、世界3位の軍事費をもとうとしているようだが、軍備というものは拡大の一途をたどる傾向があって歯止めがむずかしい。また最近、テレビ番組などにおいて政府批判の発言が抑圧される(自主規制も含め)傾向にあるという意見も少なくない。 タモリは「ブラタモリ」といった番組でも知られるように、単なるお笑い芸人におさまらない知識をもつ人物であるから、おそらく本人も、そういったことに対する警鐘の意味で発言したのだろう。 とはいえもちろん、現在と、本当の戦前との違いも大きい。 まず現在は、太平洋戦争に対する猛烈な反省のあとの戦後を通過している。情報技術、特に一般市民からの発信のツール(SNS)が格段に発達して言論を統制することが困難になっている。あらゆるところでグローバリゼーションが進み、日本文化そのものが変質している。つまり「新しい戦前」は本当の戦前と同じではない。 しかしこと軍事に関しては、突然のように戦前と似た様相が出現しつつあることもたしかなのだ。