「もうひとつの民主主義」が生まれる条件とは? 「市民型民主主義」と「人民型民主主義」を比較する
地理的条件
西欧、北米、日本などA型国家と、ロシア、中国、イランなどB型国家の地理的な特徴として、まず浮かび上がるのが「海洋型」と「内陸型」ということだ。もちろんロシアも中国もイランも海に面しており、西欧も北米もかなり広域の内陸部を有しているが、国家の集団形成原理として、すなわち対外関係の在り方として総合的に「海洋型」と「内陸型」の国家像が浮かび上がる。以下はまだ仮説であるが、国家発展における海の条件と陸の条件を検討したい。 海洋型の国家が発展するためには、海を制することが必要で、近未来の気象を予測すること、太陽や月や星などの天測と羅針盤によって船の位置と方位を測ること、船を操るための波と櫂と風と帆の力学、船という巨大な構造物の建造と保全の技術、航海予定に合わせた食料や水や医療品などの確保、といった科学技術を必要とする。こういった科学技術は古代ギリシャという海洋国家に端を発し、中世にはむしろイスラム圏や中国など内陸型大帝国における文明として発達したものだが、15、6世紀の外洋航海を契機として、その科学文明のエネルギーが、主として西欧の海洋型(外洋型)国家に移動したように見える。 内陸型の国家発展は、陸地それも場合によっては山や川や砂漠や草原などを開拓することであり、そのためには人の数が重要だ。もちろん烏合の衆ではダメで、上層部の意志によって「統制」された人の数が必要である。逆に海洋において船の大きさと数が限られている状態では、問題を人の数で押し切るわけにはいかない。分業すなわち専門的な知識と技術の「交換」が必要だ。また限られた人数で異国の地に到達した場合、水や食料を調達する必要があるが、力ずくで奪うより何らかの「交換」によって手に入れる方が合理的である。 つまり内陸型の国家発展が、法律や命令による「統制」を集団形成の第一原理とするのに対して、海洋型の国家発展は、分業も労働価値の交換と考えることを含め、何らかの価値の「交換」を集団形成の第一原理とする。