横澤夏子「自分の“甘える力”も育てていきたい」三姉妹の育児で気づいた、一人で抱え込まないことの大切さ【インタビュー】
●繰り返す子育ての中で身につけた「甘える力」
――日々のイライラも共感できるところで、本書にも包み隠すことなく綴られています。いつもどんな時にイライラしてしまいますか? 横澤:私の場合は、子どもが風邪薬を飲まない時にイライラするんですよ。限りある粉薬だというのに、鼻息で飛ばされたり、パジャマに着替えてあとは寝るだけって時に全部吐き出されちゃったりして。で、ベタベタの水がフローリングの目に入り込むという…。自分でも「なんでこんなに?」って思うくらい大爆発します。通報されたら困るから口を何かで塞ぎながら「ウワーッ!」って。 ――その様子が思い浮かぶようです(笑)。 横澤:私が「ウワーッ!」ってなると、三人が「ごめんなさい」と謝ってくるという、まさに地獄絵図。でも小児科の先生に相談したら、「水で割って飲まなければジュースでもゼリーでもいいし、好きなものと一緒に飲ませてくださいね」と言われて解決しました。子どもの看病でこちらも疲れていたし、日々のことができなかったりして、その積み重ねで爆発したんでしょうね。 ――日々のイライラが、お医者さんや保育士さんの一言で救われているのですね。 横澤:そうなんですよ。そんな簡単なことなんだって思った瞬間にすごく安心しました。本当に、手を差し伸べてくれる人がいっぱいいる温かい世界で。だからこそ、差し伸べられた手に気づけるように、自分の甘える力も育てていかないと。これからも周りの人たちにしがみついていこうと思っています。 ――もともとは甘えられないタイプだった、と本書でも語られていましたが。 横澤:長女気質でずっと甘え方を知らなかったんですが、子育てをしてから自分の生態に初めてぶち当たりまして。 ――それが、助けてくれる人たちにしがみつこうと思えるようになったのは大きな変化だと思います。限界を感じるような経験をいくつも乗り越えてこられたのではないでしょうか。 横澤:子育ての限界点は、“毎日の繰り返し”の延長線上にあるのかもしれませんね。娘が生まれたばかりで眠れない日々が続いた時も、「いつまで寝不足が続くんだろう」と終わらない日々に対して限界を感じていたし。普段も、どうしてバタバタしているのか、何に悩んでいるのかわからないのに、突然爆発してしまう時があるので。二人目、三人目になれば、上の子を見ているから「こんなもんか」って思えるんですけど。 ――三姉妹と聞くと、三人分の子育てがずっしりのしかかるイメージですが、お子さんが生まれるたびに楽になったこともあるのですね。 横澤:はい。赤ちゃんを初めて可愛いと思えたのは三人目でしたし。その子によって悩みは違いますけど、子育てって本当に大変で、壁にぶち当たるたびに、壁をどうやって崩そうかと躍起になって。でも、どうすることもできなくなって、ママ友や先輩ママに相談すると、もしかしたら私自身が壁を作っていたのかもしれない…と気づいて。少し落ち着いてみたら、「ここは引き算でいけるかもしれない」みたいな抜け道がたくさんあったんです。 ――子育てを通じて、抜け道の存在に気づかれたということでしょうか。 横澤:そうですね。自分一人でやろうとしなくてもいいんだ、と思えるようになりました。友だちの集まりでも「私が、私が」と幹事を引き受けまくるタイプでしたけど、「なんだ、みんなで協力すればいいんだ」って、この歳になって初めて人に甘えることを知りましたね。