いまなお物議の「表現の不自由展」 名古屋では「アンチ展示会」と対面開催で波乱?
識者は「アートの不在」懸念
都市型芸術祭やアートプロジェクトに詳しく、愛知県庁職員として2010年の「あいちトリエンナーレ」に携わった経験を持つ大阪市立大学大学院都市経営研究科の吉田隆之准教授は、今なお尾を引く一昨年の混乱の教訓として、「物議を醸す展示をやるなら、芸術と公共性の議論を積み重ねておく」ことが前提ではないかとする。 しかし、東京や大阪の現状から「(開催前に)多様な関係者や市民を巻き込むことをしないまま、『展示ありき』の方針で進めると、なかなかうまくいかないのではないか」とみる。 さらに、名古屋の状況については、「今回は『不自由展』と『トリカエナハーレ』が同じ建物内で、無防備に対峙するような危うさがある。本来なら、アーティストやキュレーター、もしくはエデュケーターなどが間に立って、主催者間はもちろん、市民や観客とのコミュニケーションを促すべきだ」と指摘。そして、もともとは芸術祭の企画展の話であったはずなのに、「『アート不在』となってしまっているのが気がかり」と危惧する。 (関口威人/nameken)